分子科学研究所

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2015/02/03

アウトリーチ

大迫隆男先生の出前授業記 (2015年1月29日実施)

 1月29日(木)に岡崎市立北中学校で2年生全員を対象に、「水中での有機分子変換反応〜水と油の関係改善でグリーン反応〜」という内容の出前授業を行いました。

 まず授業の初めに、生徒さんに「有機化合物というものを知っていますか?見た事ありますか?」に問うところから始めました。案の定、多くの生徒さんは、「聞いたことも、見たこともない」でした(有機化合物という言葉は高校化学で出てくる:知らないのは当然!)。そこで私は「本当に?」、「実は、有機化合物ってものは、薬、服、ペットボトル、有機ELなどで、日常生活で触れているんだよ。身の回りに溢れているもの」と説明すると、少し驚いていた様子でした。

oo2.jpg 薬、服、ペットボトル、有機ELなどの有機化合物を作りだすためには、有機化合物の原料から化学反応で作り出さないといけない。有機化合物は、いわゆる「油」なので、同じく「油」である有機溶媒中での化学反応で作り出されている。しかし、最近、エコ、環境調和などの言葉を普段から耳にするように、もちろん化学反応も環境に配慮する必要がある。そのため、有機溶媒の使用を減らさないといけない。じゃあ、周りにたくさんある、水は使えば、環境に優しくなるはず。でも「水と油」という言葉があるように、油に水を加えると、両者は混ざり合わず、2層に分離してしまう。どうしたらいいか?
 

oo1.jpg このような内容で授業が進み、「水と油」の関係を改善しようということで、油が浮いている水に台所にある塩、砂糖、洗剤をそれぞれ加えて振るとどうなるかという実験を見てもらいました(結果は洗剤を入れると油は水に馴染む:ミセル化現象)。生徒さんは、普段、目にしているものである洗剤で油と水を混ぜることができるのかという感じで実験を楽しんで見ていたような気がします。

 洗剤の分子構造には、「親水基」と「疎水基」があり、このもの両方が存在する(両親媒性をもつ)ことで、「水と油」の関係を改善することが水中有機分子変換反応の鍵であることを理解してもらいました。その後、その鍵を利用した両親媒性ポリマー担持触媒を用いた水中有機分子変換についての我々の最新研究成果について紹介させていただきました。

 今回の授業は、生徒にとって、少し難しい内容もあったかもしれません。しかし、少し寒い体育館で、静かに耳を傾けてくれたことを非常に感謝しております。身近なものからヒントを得て、最先端研究を行っていることを少しでも感じられる機会になったならば、幸いです。

                                  (大迫隆男 記)