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生命・錯体分子科学研究領域栗原グループ

場所:山手キャンパス 3号館3F西
Annual Review : こちら

両親媒性分子,分子集合体,ベシクル,人工細胞

柔らかい分子集合体で創る人工細胞

「生命とは何か?」「生命はどのように誕生したのか?」 誰もが一度は抱いたことがある疑問だと思います。生命 と非生命を分ける最低限の要素は、自己と環境を分ける 境界、生命の個性を記述する情報、内部で行われる代謝 反応を促進させる触媒です。私たちのグループでは、分 子を有機合成し、分子集合体から生命の最小単位であ る細胞を構築することを行っています。人工細胞の境界 として広く用いられている分子集合体がベシクル(リポ ソーム)です。ベシクルは、両親媒性分子が疎水性部位 を向かい合わせて2分子膜を形成し、それが中空状に なった構造をとります。

私たちは以前、菅原正研究室(現・神奈川大学)のもと、 ベシクル内部に鋳型DNA、プライマー、DNA重合酵素 などを封入し、ポリメラーゼ連鎖反応させて、ベシクル 内部でDNAを増幅させました。この増幅DNAを内包す るベシクルに、ベシクル膜分子の原料である膜分子前駆 体分子を添加すると、膜内に含まれる酸性触媒分子が膜分 子前駆体を加水分解し膜分子が生産されます。ベシクルは 生産された膜分子を取り込み肥大し、最終的に分裂しま した(ベシクルの自己生産ダイナミクス)。このベシクル 型人工細胞は、内部の情報分子の複製と境界の自己生産 が連動する初めての人工細胞として注目を集めました。

細胞がその個体数を増やし個体を維持していくため には、連動する3要素だけでなく、環境による影響を受け にくい性質(ロバスト性)も備えていることが重要です。 本研究室では、以下のように各要素に摂動を与えること で、ベシクル型人工細胞が最適な状態へと自発的に再 構築される協奏システムの構築を目指しています。これ は、生命がどのように誕生したのかを説明するシステム として有用です。加えて、周りの環境変化に応じて、最適 な状態をベシクル自身が見つけ出すので、ロバスト性を もつ微小反応場としての応用も期待されます。

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Artificial cells generate new artificial cells adapted to the environment.

参考文献

  1. L. Sheng and K. Kurihara, "Transformation of oil droplets into giant vesicles," Chem. Commun.52, 7786-7789 (2016).
  2. 栗原顕輔 "分子が関わる人工細胞から生命を考える" 季刊生命誌 88 (2016).
  3. K. Kurihara, Y. Okura, M. Matsuo, T. Toyota, K. Suzuki and T. Sugawara, "A recursive vesicle-based model protocell with a primitive model cell cycle" Nature Commun., 6, 8352 (2015).
  4. Kurihara K., Tamura M., Shohda K., Toyota T., Suzuki K. & Sugawara T. Self-reproduction of supramolecular giant vesicles combined with the amplification of encapsulated DNA. Nature Chem.3, 775-781 (2011).