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生命・錯体分子科学研究領域草本グループ

場所:山手キャンパス
Annual Review : こちら

Radical, Open-shell electronic states, Photonic-electronic-magnetic properties

開殻電子系分子を基に新しい光・電子・磁気物性を開拓する

水(H2O)や窒素(N2)、ベンゼン(C6H6)に代表されるように、一般的な分子は偶数個の電子を持ち、閉殻電子構造を有しています。一方でラジカルと呼ばれる奇数個の電子を有する分子は開殻電子構造を有し、超伝導体になったり磁石になったりと、閉殻電子構造では実現が困難な化学的・物理的性質を発現します。私たちの研究グループでは、ラジカルや有機-無機複合物質である金属錯体など開殻電子構造を有する新しい分子性物質を合成し、これまでにないユニークな機能を創出することを目指し、研究を進めています。

私たちはラジカルが示す発光特性に着目しています。発光性の分子が有機EL等の高性能発光デバイスの鍵物質として盛んに研究されている一方で、ラジカルは発光しない物質として考えられ、その発光特性は未開拓研究分野となっていました。この未開拓領域を切り拓くべく、私たちは分子の構造を適切にデザインし、高い化学安定性を有する発光性ラジカルPyBTMを開発しました。PyBTMを基として新しい発光性ラジカルや発光性開殻金属錯体を様々に合成し、「開殻電子系ならではの電子の振舞いが、どのような新しい光特性を生み出すのか?」を調べています。最近では、ラジカルの発光色が磁場によって大きく変化することを世界で初めて発見しました。これらの研究成果は、基礎科学の発展のみならず、例えば発光デバイスを省エネ化するための新方法の提案など、応用科学の発展にも貢献しています。

その他、開殻電子系錯体を一次元的・二次元的に規則的配列させた結晶を作製し、結晶中を動き回る電子、あるいは動き回りたいのに動けなくてうずうずしている電子が示す電気・磁気特性を調べています。結晶という小さな粒の中からこれまで誰も考えもしなかったような壮大な物理が生まれることを夢見て、日々研究を進めています。


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(a) Molecular structure of PyBTM and its characteristics.
(b) Schematic photoexcitation-emission processes.
(c) Emission in CH2Cl2.
(d) Emission of PyBTM-doped molecular crystals.
(e) Controlling emission by magnetic field.

参考文献

  1. S. Kimura, T. Kusamoto, S. Kimura, K. Kato, Y. Teki, and H. Nishihara ‘‘Magnetoluminescence in a Photostable, Brightly Luminescent Organic Radical in a Rigid Environment’’ Angew. Chem. Int. Ed.57, 12711–12715 (2018).
  2. Y. Hattori, T. Kusamoto, and H. Nishihara ‘‘Enhanced Luminescent Properties of an Open-Shell (3,5-Dichloro-4-pyridyl)bis(2,4,6-trichlorophenyl)methyl Radical by Coordination to Gold’’ Angew. Chem. Int. Ed.54, 3731–3734 (2015).
  3. Y. Hattori, T. Kusamoto, and H. Nishihara ‘‘Luminescence, Stability, and Proton Response of an Open-Shell (3,5-Dichloro-4-pyridyl)bis(2,4,6-trichlorophenyl)methyl Radical’’ Angew. Chem. Int. Ed.53, 11845–11848 (2014).
  4. T. Kusamoto, H. M. Yamamoto, N. Tajima, Y. Oshima, S. Yamashita, and R. Kato ‘‘Bilayer Mott System with Cation···Anion Supramolecular Interactions Based on Nickel Dithiolene Anion Radical: Coexistence of Ferro- and Antiferro-magnetic Anion Layers and Large Negative Magnetoresistance’’ Inorg. Chem.52, 4759−4761 (2013).