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生命・錯体分子科学研究領域正岡グループ

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場所:山手キャンパス 3号館4F西
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金属錯体,人工光合成,触媒,酸素発生反応

人工光合成システムの構築を志向した金属錯体化学

太陽光エネルギーを利用して、水素やアルコール等の貯蔵可能なクリーン燃料を作り出す。“人工光合成”と呼ばれるこれらの反応は、実用化されれば世界のエネルギー問題が一気に解決する可能性のある究極のエネルギー製造技術と考えられています。我々の研究グループでは、生体機能の中心的な役割を果たしている“金属錯体”に注目し、人工光合成を実現するための基盤づくりに取り組んでいます。

植物が行う光合成では、二酸化炭素(CO2)が還元され炭水化物が合成されるのと同時に、水(H2O)を酸化して酸素(O2)が作られています。特に、後者の酸素発生反応は、天然の光合成だけでなく人工光合成システムの構築においても不可欠なプロセスであり、高い活性・耐久性を有する酸素発生触媒の開発が人工光合成を達成するための急務の課題となっています。

最近、我々の研究グループでは、人工光合成技術の実現に必要となる、(1)天然の光合成系に匹敵する高い活性を持ち,(2)耐久性が高く,(3)安価な金属元素により構築される,という3つの条件を満たす酸素発生触媒の開発に世界で初めて成功しました。

天然の光合成反応では、植物中に存在する光化学系IIと呼ばれるタンパク質中に存在する酸素発生錯体 (Oxygen Evolving Complex, OEC)が良好な酸素発生触媒として機能することが知られています。しかし、OECは生体中でのみ安定な構造であり、そのまま取り出して用いることは困難です。そこで我々は,OECの構造のどの部分がその高い酸素発生能と関連しているかを考察することで、新たな触媒が開発できるのではないかと考えました。このコンセプトを「植物に学ぶ触媒デザイン」と呼んでいます。上記の「植物に学ぶ触媒デザイン」に基づき、我々は、安価な鉄イオンを用いた人工触媒(鉄五核錯体)を開発しました。この鉄五核錯体の酸素発生速度は、既存の鉄錯体触媒と比較して1,000倍以上向上しており、耐久性も十分に高いことが実証されました。また,反応条件が異なるため厳密な比較は難しいですが,植物の光合成における酸素発生反応速度をも上回ることも示されました。

我々の研究グループでは、上記の酸化側の研究に加え、貯蔵可能エネルギーを作り出すための還元側の研究や、光駆動物質変換反応や触媒反応場構築のための基礎研究にも精力的に取り組んでいます。現在も、金属錯体を基盤材料とする人工光合成システムの開発を目指し、日夜研究を続けています。

 

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参考文献

  1. M. Okamura, M. Kondo, R. Kuga, Y. Kurashige, T. Yanai, S. Hayami, V. K. K. Praneeth, M. Yoshida, K. Yoneda, S. Kawata, S. Masaoka, "A pentanuclear iron catalyst designed for water oxidation" Nature 530, 465 (2016).
  2. M. Yoshida, M. Kondo, S. Torii, K. Sakai, S. Masaoka, "Oxygen Evolution Catalysed by a Mononuclear Ruthenium Complex bearing Pendant -SO3 Groups" Angew. Chem. Int. Ed., 54, 7981 (2015).
  3. M. Yoshida, M. Kondo, T. Nakamura, K. Sakai, S. Masaoka, "Three Distinct Redox States of an Oxo-Bridged Dinuclear Ruthenium Complex" Angew. Chem. Int. Ed., 53, 11519 (2014).