講演(11:00〜12:00)

見えないけれど身近な「分子」
—光学活性有機分子の開発を中心に—

魚 住 泰 広
分子科学研究所 錯体化学実験施設 教授

1984 年北海道大学卒 1986 年同大学院薬学研究科修士課程修了 1990 年薬学博士 北海道大学薬学部教務職員、同触媒化学研究センター助手、米国コロンビア大学リサーチアソシエート、京都大学大学院理学研究科講師、名古屋市立大学薬学部教授を経て現職

 20世紀を振り返ったとき,私たちの生活や生命を守り豊かにしてきた立て役者の一人は間違いなく「分子」です.しかし悪いことをする「分子」(公害原因,環境ホルモンなどなど)は目に見えないが故に暗殺者のような脅威ですらあります.「分子」は私たち人類が(良くも悪くも)取り扱うことのできる最小の機能単位です.これらの分子の構造を自在に操り,変換し,合成し,その性質を解き明かして行くことは化学研究によって初めて可能となります.中でも私たちの生命を創り出す蛋白質,アミノ酸,遺伝子などは全て有機分子であり,その中でも光学活性有機分子という分類に入ります.そのため生命活動に関わるような医薬品なども光学活性有機分子である例が多く知られています.

 それら光学活性有機分子とはなんなのか? どうやって作るのか? 何の役に立つのか? を一般雑学的話題から最新の研究成果までを盛り込みつつ概説します.また特に講演者の研究の中から「遷移金属錯体触媒を利用した光学活性有機分子の触媒的不斉合成」を取り上げ最新の成果の一部も紹介します.


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