講演(13:00〜14:00)

ポストゲノム時代の分子生命体科学
計算機シミュレーションによる蛋白質分子の立体構造予測

岡 本 祐 幸
分子科学研究所 理論研究系 助教授

1979年ブラウン大学卒 1984年コーネル大学大学院博士課程修了、理学博士1984年ヴァージニア工科大学博士研究員、1986年奈良女子大学理学部助手、1993年同助教授を経て1995年4月より現職

 ヒトゲノム計画という言葉は最近新聞や雑誌でも大きく取り上げられています。ヒトゲノムとは人間が持つ遺伝情報の総称ですが、それはDNA の4つの塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンの頭文字をとって、A、G、T、C と表されます)の配列のことです。そして、その配列の中で意味を持つ部分が遺伝子と呼ばれ、ヒトゲノムには数万個の遺伝子が存在すると言われています。そして、それぞれの遺伝子は1つの蛋白質のアミノ酸配列を表しています。すなわち、ヒトゲノムとは、人間が一生の間にどのような蛋白質を合成するかを指定する設計図なのです。マスコミでも大きく取り上げられていますように、現在、この設計図の解読がほぼ完了しようとしています。ヒトゲノムの解読が終了するということは蛋白質のアミノ酸配列が決定されるということですが、この分野の学問の現状では、アミノ酸配列の情報だけでは、それぞれの蛋白質がどのような形をしていて、どのような機能を担うのかという、本当に重要なことに対して何も答えを与えることができません。すなわち、ヒトゲノム計画の次に来るもの(ポストゲノム時代)は蛋白質の立体構造と機能をアミノ酸配列の情報から決定するという問題です。本講演では、計算機シミュレーションによって蛋白質分子の立体構造を予測する研究について詳しくお話します。


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