分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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最も気に入っている研究成果は何?

自分たちが立ち上げに関与した放射光施設が筑波の高エネルギー研究所にできたのが、私が助手になった時でした。できたばかりの装置でいろいろなものを測定しました。その時、銅の塩化物を使った実験で面白い結果を得ました。シンクロトロン光を使った最初の頃の仕事研究でもあり、これが最も思い出深いものです。そして、この研究は、10年ほどして、銅の酸化物の超伝導体の研究が流行したとき、思わぬところで注目されました。酸化物超伝導体の銅が2価か3価かということで、議論になったことがあったのですが、10年も前の私の研究は、2価であることをきちんと示していたのです。

研究スタイルの特徴は?

理論と実験、その両方ができるのが私の特徴です。理論は学部4年生から理論の研究室で訓練を受けてきました。実験については、大きな装置の立ち上げ期から関わったという経験から、装置作りから実際の測定まで自分でできるという自信があります。研究の進展していくステージに応じて、理論と実験のどちらに重みをおくかが異なってきますが、最初のアイデアから結論に至るまで、時間は掛かりますが、一貫して研究を行うことが私の研究スタイルです。特に、方法論に強いというのがセールスポイントでしょう。

先生の研究の哲学は?

基礎理論に裏付けられた息の長い研究を行いたいと考えています。流行の上っ面の解釈はせず、必ず基本に戻って考えることを大切にしています。  

また、研究者間での競争は好きではありませんし、人と同じことをするのも好きではありません。ですから、人のした実験の解釈屋や、いろいろな得意分野の研究者をまとめるコーディネーターにはならないように意識しています。また、同じ研究分野の人とはお互いの得意とするところを尊重して、補い合うように親しく国際共同研究をしています。

趣味は?

趣味と研究を兼ねている面が強いですけど、コンピューターを組み上げるのが趣味です(笑)。ハードウエアは部品を集めて自分の欲しい性能のものを製品の5分の1程度の予算で作ります。ソフトウエアは無料で利用できるリナックスを使って本格的なシステムを作るのが面白いですね。こういう趣味にはいい時代ですね。


小杉 信博(こすぎ のぶひろ)・教授
1976年京都大学卒  1981年東京大学大学院理学系研究科修了、理学博士 東京大学理学部助手・講師、京都大学助教授を経て1993 年1月より現職 1994年4月より2010年5月まで UVSOR施設長併任 
1996年カナダ・マックマスター大学客員教授、2009年フランス・ピエール&マリー・キュリー大学(パリ大学)客員教授

聞き手&文:寺内かえで(広報室)、写真&web:原田美幸(広報室)
2010.7up

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