分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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「タンパク質フォールディング」の研究者(桑島邦博先生)

私たちの細胞の中で、遺伝子の情報に従ってアミノ酸が鎖状に結合してタンパク質が生合成されます。しかし、多くのタンパク質は鎖から複雑な立体構造へと折れたたまり(この折れたたまることを“フォールディング”といいます)、そして初めて生体にとって重要な機能をもつようになります。それでは、どのようにしてその機能を持った立体構造を作り上げるのでしょうか。
先生は、このような興味から、さまざまな物理化学的手段や遺伝子操作実験などの分子生物学的手法を駆使して、天然の状態でのタンパク質の立体構造が形成される仕組みを研究しています。

もっと詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
http://www.ims.ac.jp/know/bio/kuwajima/kuwajima.html
http://gagliano.ims.ac.jp/Welcome.html


研究者になったのはなぜですか?

そうですね……。
研究者にも興味はありましたが、高校の先生にも興味がありました。ですから、教員免許も持っていますよ。研究者を強く意識したのは大学院に進学してからですね。

今も若い人に教えることに興味はありますか?

もちろん、ありますよ。

今の研究テーマとの出会いは?

分子生物学という分野に興味をもったきっかけは、ケンドリュー(ヘムを含むタンパク質の構造を解析した功績により1962年にノーベル化学賞を受賞)の『生命の糸 -分子生物学への招待』という本を読んだことがきっかけです。

卒業研究は、理学部高分子学科の生体高分子の研究室で行いました。北海道で牛乳の産地ということもあり、ミルクに多く含まれるラクトアルブミンという乳糖合成酵素をの一部となるタンパク質を研究しました。このラクトアルブミンはリゾチーム(卵の卵白に多く含まれています。細菌細胞を溶解する作用を持ち、風邪薬にも配合されることがあります)とアミノ酸配列が大変よく似ているんです。機能が全く違うのにアミノ酸配列が似ていることに興味を持ちました。
リゾチームは変性するときに中間体を通らずにいっぺんに壊れるのに対して、ラクトアルブミンでは中間体を経て壊れることを見出し、これが博士論文の仕事となりました。
この中間体が、タンパク質のフォールディングについて、何か大切な情報を与えてくれるのではないか、とのきっかけから、タンパク質のフォールディングの解明が興味の対象となっていきました。

最近では、アルツハイマー病や狂牛病などは、フォールディングの異常によるものだとわかってきました。フォールディングの仕組みをきちんと解明することがよりいっそう重要となってきています。

それから、ラクトアルブミンについても面白いことが分かってきました。この物質はホエー成分(全乳または脱脂乳からチーズを作る際に得られる液体で、製菓・製パンなどの原料や家畜飼料として利用されます)の中で最も多いものですが、脂肪酸と複合体を作ることによってガン細胞を特異的に殺すことがわかってきました。こうして哺乳類は赤ちゃんを守っているんですね。

新しいことが分かってくるということは面白いですね!

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