
TOPページ > 見附 孝一郎
最も気に入っている仕事は?
研究テーマごとに思い出深いものを挙げてみましょうか。
まず、大学院時代の仕事ですが、クラスターの衝突反応を発表した論文は、失敗の連続から生み出されただけあって強く印象に残っています。クラスター関連の教科書では、マイルストーン的な仕事としてよく取り上げてもらいます。
次に、分子研に来てからの仕事ですが、まずは1996年に発表した論文ですね。これは、UVSORの放射光とピコ秒レーザーを厳密に同期させて、高励起分子の分光計測を可能にしたものです。UVSOR施設とレーザーセンターの研究者の協力で行われた、正に分子研ならではの研究だったと思います。この論文は今でも毎年数報の論文に定常的に引用されています。
http://www.ims.ac.jp/publications/professors/mitsuke/mitsuke.html)。
研究スタイルの特徴は?
多くの人が参入し群がってくるようになると、だんだんその研究分野には魅力を感じなくなってくる、という妙な性分があります。クラスターの研究も、始めたときにはほとんど誰もやっていない未開拓の分野でした。しかし、関与する人達が年々増えて、クラスター化学の分野の研究者人口が多くなってきました。ちょうどその頃、分子研に異動したというタイミングですね。
競争より未踏の地を探索するというのがポリシーですね。
でも、色素増感太陽電池はちょっと違います。こちらは、膨大な人数の研究者と技術者が鎬を削っています。年を経ることにより、私自身の考え方が変わってきたという面もあるかもしれません。これからの研究者人生を考えたとき、一般の人々や開発途上国の研究者にも興味を持ってもらえる課題、成果を社会に還元できる研究を自分の仕事として少しは残したいと思うようになりました。もちろん、今までのポリシーとは違っても、このタイプの太陽電池は光励起状態の一側面として十分に面白く、分子研での研究テーマとする価値があると考えています。
今までで一番うれしかったことは何ですか?
全体的に幸せだったと思うのでなかなか答えるのは難しいですが、若い時期に分子研に来て、独立した研究環境が持てたことはやはり嬉しかったですね。
趣味は?
高校生から大学院生のころにかけては、コントラクトブリッジというカードゲームに懲りました。
子供ができてからは、彼らのスポーツ大会の応援とか温泉旅行とか、もっぱら家族サービスですね(笑)。
見附 孝一郎(みつけ こういちろう)・准教授
1981年東京大学理学部化学科卒 1986年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士 東京大学教養学部助手を経て1991年4月より現職
聞き手&文:寺内かえで(広報室)、写真&web:原田美幸(広報室)
2010.8up