
TOPページ > 藥師 久彌
研究スタイルの特徴は?
物質の研究には、物質の合成と物性の解明という二つの側面があり、これらが、車の両輪となって発展していきます。私は、合成よりも、“この理由はなんだろう”というメカニズムの解明の方が好きですね。
最も気に入っているお仕事は?
1988年に分子研に着任しましたが、最初のころは、フタロシアニンというクロロフィルと似た構造の物質を使って研究していました。この物質は、普通の状態では、分子の真ん中にある金属のd軌道というところの電子は物性に関係しないのですが、高圧下では、このd電子が電気伝導に関与する事を発見しました。これが一番自分のお気に入りでしょうか。
今、最もホットな興味は?
物質の状態が、温度や圧力など一定の外的条件のもとで、一つの相から別の相へ移る現象、例えば、液相―気相、金属―絶縁体、超伝導―常伝導、強誘電性-常誘電性のような現象を相転移といいます。相転移を起こす温度を転移温度といいます。 私の研究対象は、電子を主役とした有機物の強誘電性物質ですが、このような物質は、わずかな温度や圧力の変化により、金属と絶縁体の間をやじろべえのバランスが狂うように、相転移を起こします。
今、BEDT-TTFという有機電荷移動錯体の炭素原子や水素原子を、炭素や水素の同位体原子に置き換えたものを作り、研究をしています。特に水素原子を重水素に置き換えることにより、相転移温度が変わる、という面白い現象が観測できます。なぜこのようなことが起こるのか、ということを、分子のなかの電子レベルで詳しく解明しています。