分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 柳井 毅

具体的にはどのようなことですか?

化学反応計算や物性予測に用いられる計算(量子化学計算や電子状態計算などと呼ばれるもの)では、分子の電子の運動を量子論の基礎方程式に従い記述することで、分子の反応性や構造を定量的に見積もります。
化学では、価電子の運動やその多体相互作用は大きな役割を果たしています。計算では、その価電子の変化を精度良く追跡する必要があります。私は、その記述に関する方法論開発に興味があります。

この分野は1980年代に随分進展し、小さな分子に限れば、経験値に頼らず化学的精度で電子状態を記述することが可能です。また、密度汎関数理論に基づく分子軌道計算法は実験研究者にも広く利用されています。しかしながら、大きな分子の複雑な電子状態(励起状態や金属化合物の擬縮重状態)に関する計算の実現には、今なお大きな壁があります。この問題に対して、私は最先端の理論やアルゴリズムを駆使あるいは考案し、これまで解析できなかった電子状態を解明する研究を進めています。

研究スタイルの特徴は?

私の研究は、基礎的なアイデアや原理的なコンセプトを分子科学の問題に対して実証する基礎的・基盤的研究です。私たちの研究グループでは、その理論を使う立場の人が便利だと思ってくれるような理論が作れるよう心がけています。

柳井 毅(やない たけし)・准教授
1997年東京大学工学部応用化学科卒 1999年同大学院工学系研究科修士、2001年博士(工学) 
2001年学術振興会博士研究員 2002年米国Pacific Northwest 国立研究所、同年Oak Ridge 国立研究所博士研究員、2005年Cornell 大学博士研究員を経て2007年1月より現職

聞き手&文:寺内かえで(広報室)、写真&web:原田美幸(広報室)
2010.10up

<<前へ  [ 1 2 ]

Copyright © Institute for Molecular Science, All Rights Reserved.