1研究者へのみち

――物理を習って、それまで別々に見えていた自然現象が、数学で書かれた法則を通じて、突然繋がるという経験をしました。世の中って本当はこういう風にできていたのか……。
――急に視界が開けて、今まで見えていなかったものが見えてきた感覚があります。……そういうとき、何だか頭がジーンとする感覚があるんですよね。これを味わってしまうと、そういうことに関わっていたいという気持ちになりますよ。

2 進展と転身

――有機化学に進んで化合物の合成をしていました。
――やはり物理法則に関わる方が楽しいと思いました。……有機合成も生かせるところを探しました。

3待つ力

――間違ったなと思っても……飛び出すわけにはいかないじゃないですか。……時間が解決する問題になります。私はそれに気付いて、待つことができました。
――人に相談しても良いけど、それで解決する問題ではなくて、答えは自分の中にあるんですよ。

4猜疑から真実へ    

――でも、科学の歴史には、いろんな不思議なことが起きているのも事実です。……科学は人間の営みですから、そんなに単純なものじゃないんだなと……。
――例えば一個一個の磁石がだんだん強くなっていくとか、……それが結局、我々の生活を変えていくわけです。

5研究の場から離れて・書物との対話  

――中学校、高校と水泳部で、大学ではスキューバダイビングをやっていたので、海は結構好きなんですよ。
――漱石って日本と西洋の文化がぶつかり合って、お互いの矛盾が噴出するようなところで、凄く考え抜いて、苦労した人だと思うんです。……心の余裕がないと、新しいサイエンスは出てこないです。あまりに忙しくて、目の前のことしか見えなくなって……。そういうときに『三四郎』に出てくる広田先生のイメージが参考になっています。

6研究とマネジメント    

――運営もエンジニアリングです。……マネジメントの初歩を、講習会などで学ぶことができれば、研究室運営が楽になって、研究成果にも繋がると思います。……九九のような基礎知識を知らなくても掛け算はできますが、大変ですよね。
――基本は、優先順位を付けることですかね。……リストに書き出すことは有効ですね。……問題発生を予測する勘は、不本意ながらもいろいろ困ったことに直面して、身についてくるものだと思いますが。