分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 青野 重利

そこで「一酸化炭素センサー」と出会われたわけですね!!

ええ。微生物が一酸化炭素のセンサーをもっているのではないか、と推測させるような論文に出会いました。このとき、一酸化炭素を検出する仕組みをもっているのならば、必ず金属タンパク質が関係しているはずだ、と考えました。 金属を含んでいれば、これまで触媒化学の研究の中で自分が修得してきた物理化学の知識や、手法は大きな助けになる、そう考えて、一酸化炭素センサーとして働くタンパク質を探し始めました。この仕事には、研究上の競争者もいましたが、幸いなことに、最初に一酸化炭素センサータンパク質を見つけることができました。

成功を予感したときは!!

私たちは一酸化炭素センサータンパク質の構造と機能の関わりについて知りたいと思っていました。そのためには、いろいろな実験に使うために、ある程度まとまった量のタンパク質が必要になります。

そこで、一酸化炭素センサータンパク質の遺伝子を見つけた後、大腸菌にその遺伝子を組み込んでタンパク質を作らせるという手順で研究を進めました。ある日、大腸菌を培養し、その後観察した時、赤く染まったコロニー(大腸菌の集落)を見つけました。赤く染まっているということは、その大腸菌の中に何かタンパク質ができていて、しかも金属が含まれている可能性が高い、と考えて興奮しました。

調べた結果、大腸菌を赤く染めているものは、私たちが求めていた一酸化炭素センサータンパク質でした。この一酸化炭素センサータンパク質は、鉄を含んだ有機色素である「ヘム」と呼ばれる分子を持っているために赤色に見えたのです。

その後、そのタンパク質の機能と構造について研究を進めました。一酸化炭素というのはそれまで、生物にとって重要ではなく、むしろあまり良いものではないというイメージが あったと思います。しかし、私たちの研究は、一酸化炭素が生物にとって意味のある役割、すなわちシグナル(生体内で情報を伝えるもの)としての役割を担っているということを初めて突き止めました。

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