分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 藤 貴夫

最も気に入っている仕事は?

理化学研究所にいたときに行った波長変換技術の開発ですね。
私は理化学研究所に来るまでに、いろいろな研究室で仕事をしてきましたが、どこもみなレーザーを専門とする研究室でした。だから、相談をする人が周囲にたくさんいました。ところが、理化学研究所では化学の研究室だったため、レーザーに詳しい人はいなかったんです。それで、最初から最後まですべて一人で行いました。大変でしたが、やり遂げたときには“グループリーダーとして独立して研究していける”という自信を持つことができました。

今、最もホットな興味は?

分子構造のダイナミクス(分子の構造が変化していく様子)を、紫外光と赤外光を同時に使った時間分解分光(スナップショットのように捉える手法)で測定できるようにしたいと思っています。紫外領域の光によって、多くの分子が光化学反応を起こします。また、赤外領域の光は分子構造に対して重要な情報を与えてくれます。紫外光パルスによって光化学反応を駆動し、それによって分子の構造がフェムト秒のオーダーで変化する様子を赤外光パルスで検出するような新しい測定系を作りたいと思います。従来の類似の研究では、紫外光と赤外光は別々の手法で発生させていたのですが、理研で行ってきた気体を用いた波長変換技術を用いれば、紫外光と赤外光の超短光パルスを同時に発生させることができます。これは、気体を使った波長変換ならではの特徴です。この光源によって、従来より一桁以上時間分解能を上げることができ、いままで測定されなかった超高速な現象を明瞭に測定することができるようになると考えています。

研究スタイルの特徴は?

偶然に頼っているところが大きいかもしれません。
ウィーン工科大学に留学しているとき、提携していた企業と共同研究をしたことがあります。そのとき、たまたま“この信号は何だろう?”というものを見つけました。それをうまく利用することにより、位相をうまく検出してレーザーにフィードバックするという新しい技術を開発することができました。Femtolasers Produktions GmbHという会社のFEMTOSOURCE Rainbowという商品として現在(H22 年10月現在)も市販されていますよ。

研究から生まれたテクノロジーで企業と仕事をしたことがあるというのも特徴かもしれませんね。これからも機会があれば企業との仕事もしてみたいですね。

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