分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 古谷 祐詞

最も気に入っているお仕事は?

やはり一番初めに出したデータに愛着がありますね。博士課程のときの研究テーマです。
博士課程では、構造解析の仕事から離れ、赤外分光法を手法とした研究に取り組みました。
当時、七田研究室で講師をされていた神取秀樹先生(現、名古屋工業大学教授)が古細菌型ロドプシン、ファラオニスフォボロドプシン(ppR)を対象とした研究を開始されたばかりでした。私は、神取先生の指導のもと、、タンパク質内部に存在する水分子の水素結合状態の光反応過程での変化を検討する実験を開始しました。何回も実験を繰り返してタンパク質内部で強く水素結合した水の存在を明確に示すことができるデータが得られたときは嬉しかったですね。
少し専門的になりますが、計測に用いた重水素を持つ水分子の伸縮振動(重水素原子と酸素原子の結合距離が変化する振動)によるシグナルと二酸化炭素分子の伸縮振動によるシグナルは一部重なったところに出てくるんです。それで、自分の呼吸で出す二酸化炭素が実験の結果に影響を出さないように、息を止めて操作したりしました。今思うと滑稽に思えますが、その当時は真剣でしたね(笑)。

今、最もホットな興味は?

ロドプシンのように光をトリガー(引き金)として作用するものの他に、イオンや化合物といった一般的な物質をトリガーとして作用するタンパク質を解明していきたいですね。既に、KcsAというカリウムイオンを通過させるイオンチャネル分子や、V型ATPaseというナトリウムイオンを輸送するトランスポータ分子などを対象とした研究も行っています。
イオンチャンネルの開いた状態から閉じた状態へと変化する過程を解析できるように、急速に溶液を混合する技術を組み合わせて、赤外分光の方法に時間分解能を持たせた測定系も開発したいと思っています。

まずは、先に挙げたような構造が知られた分子で新しく開発した測定系の有用性を検証し、タンパク質が微量しか得られないために構造情報が得にくい嗅覚レセプターや味覚レセプター分子の研究者にも興味を持ってもらえれば、研究の幅がぐっと広がり、そして深いものになると思います。

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