分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 中村 敏和

何かの授業の教科書ですか?

1年生の時に全て単位を取ってしまっていたので、2年生からは授業は出ていませんでした。もっぱら自分で勉強したり、仲間と自主ゼミをしたりしていました。そんなときに、精読した本です。書き込みもたくさんしてあります。『一次元電気伝導体』(裳華房)という本です。ここには例えば、温度を下げていくと電気伝導体が突然絶縁体や超伝導体になるということが書かれています。この物質の性質が豹変するところが面白いと思いました。

それで、物性物理を専攻したいと思うようになりました。でも、当時の京大では、物理と言ったら素粒子のことを指していました。湯川秀樹や朝永振一郎(ともに京大出身)が素粒子理論でノーベル賞物理学賞をもらった伝統が残っていたんですね。だから物性の研究は物理教室ではほとんど行われてなかったんです。それで3年生で学科に進むときには化学教室へ進み、無機の研究室で導電性一次元金属錯体の卒業研究を行いました。

今、最もホットな興味は?

有機導体テトラメチルテトラチアフルバレン(TMTTF)という物質の塩、(TMTTF)2Xに対する圧力の影響を研究しています。縦軸に温度、横軸に圧力をとって物質がどういう状態を取っているかを示したものを相図といいますが、TMTTFの系での相図の理解がもうすぐ完了すると思います。この物質もある条件で超伝導となりますが、今までの超伝導理論では説明できないタイプのものなんです。この超伝導のメカニズムの解明ができて、相図の理解が完了したら、15年間の総集編となります。燃え尽き症候群になるかも(笑)。

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