分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 西村 勝之

[機能性ナノ構造体」の研究者(西信之先生)

核磁気共鳴法(NMR)は、原子核の持つ小さい磁石としての性質を利用して、非破壊で分子の構造や運動性に関する情報を調べることができる方法です。特に固体NMRは、結晶や液晶から粉末のようなアモルファス試料や粘性の高い液状試料まで、多岐に渡る試料がその解析対象となります。固体NMRは様々な物質に対して有効ですが、特に生体分子への適用が注目されています。
先生は、生体分子、特に膜タンパク質について、生体内で機能しているときと同じ状態における立体構造などを調べるため、新規な固体NMR測定法の開発に取り組んでいます。

もっと詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

https://www.ims.ac.jp/research/group/nishimura/

研究者になったのはなぜですか?

理学部の3年生の時、学生実験でNMRの簡単な実験がありました。この実験に感銘を受けたので、卒業研究ではどうしてもNMRをやりたいと思い、研究室を選びました。研究室に入ってからはわき目を振らずに研究に没頭し、研究者を志しました。企業への就職ということは全く考えませんでしたね。

今の研究テーマとの出会いは?

私は学生の頃からずっと固体NMRをやってきました。
ペプチド(アミノ酸が複数個、ペプチド結合によりつながったもの)の結晶を作り、そしてNMRで測定して原子間の距離を測るというアプローチでした。
でも、生体分子というのは結晶のように固いものではありません。実際に生体でタンパク質が機能している環境で調べたい、そう考えていました。

博士の学位を得た後、博士研究員として研究する場所を選ぶときには、そういった研究ができる研究室を選び、渡米しました。ここでは、インフルエンザAが産生するプロトンチャンネルという細胞膜に存在する水素イオンを通す膜タンパク質の研究をしました。簡便な有機合成から、試料調製、そして測定までを一人で一貫して行いました。
初めはサンプルが固い状態で測定していましたが、なかなかうまく信号が得られませんでした。そして、生体内で存在しているときのように、十分に水和させた状態の試料を作成して測定を行い、いろいろ試行錯誤のすえ、非常にシャープな信号を得ることに成功しました。私のその成功以来、その研究室での試料の作成法は一転し、私の開発した方法で行うようになりました。

それ以来、帰国してからも、生体内に存在しているときと同様な軟らかい状態のタンパク質の構造を解析するための測定法の開発に取り組んでいます。
膜タンパク質というと生体膜を貫通しているタンパク質の部分が研究の対象になることが多いのですが、脂質膜から、外に突き出した水分子と接する部分の方が運動性が高く、生理作用にとって重要な場合が多いんですよ。
そのため、現在、膜表在性のタンパク質を主な研究対象としています。

[ 1 2] 次へ>>

Copyright © Institute for Molecular Science, All Rights Reserved.