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物質分子科学研究領域西村グループ

西村グループ_メインイメージ
場所:明大寺キャンパス 実験棟3F
Annual Review : こちら

固体NMR,膜タンパク質,脂質,測定法開発,ハードウエア開発

固体核磁気共鳴法による生体分子・分子材料の解析

核磁気共鳴法(NMR)は原子核の持つ磁気モーメントが磁場中で小さい磁石として振舞う性質を利用して、測定対象にラジオ波領域の電磁波を照射することにより非破壊で物質内部の分子の詳細な構造や運動性に関する原子分解能での情報を得ることができます。固体NMRは物理学者によってその基礎が築かれ、物理化学者によって化学的情報を得る手段として方法論が発展してきました。固体NMRは結晶や液晶から、粉末のようなアモルファス試料や粘性の高い液状試料まで非常に多様な物質に対して適用可能であり、特に生体分子への適用が注目されています。

当研究グループでは分子に関する様々な情報を得るための新規固体NMR測定法の開発を行っています。NMRで観測する内部相互作用には、静磁場に対する分子の相対角度を変化させる空間項の変調および、特定の強度、時間間隔でのラジオ波照射により核スピン角運動量項への外部摂動を与えることが可能です。そのため、これらの外部摂動を適切に組み合わせる実験をデザインして特定の内部相互作用を選択的に消去、復活させることが可能です。それら内部相互作用の精密な観測、解析により原子間距離や角度情報等の分子の幾何情報を得ることが出来ます。さらに緩和時間やスペクトル線形解析から特定の時間領域の分子運動性を同定することが可能です。

目的の相互作用を観測するための最適な方法はその試料の物性で大きく変化するため目的に適した測定法の開発が重要です。特に我々が測定対象としている生体分子は水分を多く含み、極めて運動性の高い状態でその機能を発揮します。膜タンパク質を例に取ると、十分に水和された脂質膜を含めた試料を調製し、活性条件に近い状態での固体NMRを用いた解析が必要になります。そのため格子を持つような硬い固体材料と異なり、局所的な分子運動を考慮し、誤差が生じないような測定法の開発、適用および解析が必要になります。これまで膜タンパク質など脂質と相互作用する生体分子の立体構造解析1-5)、および、その解析に有効な解析法、さらに原子間距離測定法の原理的な問題の解析6)、低試料発熱型測定法の感度向上法7)および角度測定法開発8,9)を行ってきました。

現在は、脂質膜と相互作用して機能を発現する膜表在性タンパク質3,4)、およびペプチドの解析5)、それらを対象とした構造解析法、測定法の開発を行っています。

さらに分子材料10)、生体高分子材料11)、合成高分子12)などを対象として、所外の複数の研究機関と共同研究を行っています。今後、生体分子に加え、多様な有機分子を対象とした固体NMR測定法の開発を行っていきたいと思います。
 

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研究概念図

参考文献

  1. K. Nishimura, S. Kim, L. Zhang, T. A. Cross, Biochemistry. 41, 13170-13177 (2002).
  2. J. Hu, R. Fu, K. Nishimura, L. Zhang, H.X Zhou, D. D. Busath, V. Vijayvergiya, T. A. Cross, Proc. Natl. Acad. Sci. 103, 6865-6870 (2006).
  3. N. Uekama, T. Aoki, T. Maruoka, S. Kurisu, A. Hatakeyama, S. Yamaguchi, M. Okada, H. Yagisawa, K. Nishimura*, S. Tuzi*, Biochim. Biophys. Acta 1788, 2575-2583 (2009).
  4. M. Tanio, K. Nishimura*, Biochim. Biophys. Acta 1834, 1034-1043 (2013).
  5. M. Yagi-Utsumi, K. Kato, and K. Nishimura*, PlosONE 11, 0146405 (1-10)(2016).
  6. K. Nishimura*, A. Naito.“REDOR in Multiple Spin System”, Modern Magnetic Resonance, Springer, The Netherlands (2006).
  7. K. Nishimura*, A. Naito, Chem. Phys. Lett. 380, 569-576 (2003).
  8. K. Nishimura*, A. Naito, Chem. Phys. Lett. 402, 245-250 (2005).
  9. K. Nishimura*, A. Naito, Chem. Phys. Lett. 419, 120-124 (2006).
  10. T. Iijima, K. Nishimura*, Chem. Phys. Lett. 514, 181-186 (2011).
  11. T. Asakura, T. Ohota, S. Kametani, K. Okushita, K. Yazawa, Y. Nishiyama, K. Nishimura, A. Aoki, F. Suzuki, H. Kaji, A. Ulrich, M. Williamson, Macromolecules 48, 28-36 (2015).
  12. N. Ousaka, F. Mamiya, Y. Iwata, K. Nishimura, and E. Yashima, Angew. Chem. Int. Ed. 56, 791-795 (2017)