分子科学研究所は、大学共同利用機関としての重要なミッションとして、創設以来、全国の大学からの多数の研究者と協力して様々な共同研究を進めてきました。その内容は、極めて多岐に渡っています。野依良治教授や根岸英一教授のノーベル賞受賞へとつながった不斉触媒の開発において、分子研における共同研究は大きな役割を果たしました。電波天文学の研究者との協力によって、星の形成過程を解明するカギとなる詳細な分子分光計測を実現しました。生物物理学の研究者との協力では、生体分子の超高速な光化学過程を解き明かしています。計算化学の分野では、実験研究者と協力して、有機金属の関与する複雑な反応機構の解明やナノスケール物質の物性予測を、大規模計算によって解明することに成功しています。現在でも、理論計算化学の分野から生体関連分子の研究まで、多種多様な共同研究が行われており、国際的に高い評価を受けている成果も多数報告されています。
分子科学研究所では、シンクロトロン放射光施設・スーパーコンピュータや汎用大型コンピュータなどの大型研究施設や、物性測定・化学分析・分光計測に関する汎用測定装置を維持・運営し、全国の大学研究者に広く利用頂いています。また、これらのハードウェアを中心とした共同利用に加え、分野横断的な課題に関する討論を深め、分子科学の新しい発展を探るための有効な手段として、所外の研究者の提案をもとにした研究会を毎年複数会開催しています。このように所内外で研究者が活発に交換することにより、年間600件近い共同研究・施設利用が実施されており、2,000名以上にのぼる所外の研究者が参加しています。その成果として、年間あたり400報を超える研究論文が発表されています。
分子科学研究所は、各種の大型共同研究プロジェクトに対しても中心的な役割を果たしてきています。計算物質科学研究に関連する事業として、元素戦略プロジェクト(触媒・電池材料)理論グループ、計算物質科学人材育成コンソーシアム(分子科学)が実施されました。光分子科学の分野では、UVSOR 共同利用事業(放射光分子科学)を実施しています。
また、研究設備の有効利用を目指した全国的なネットワークの構築と維持にも尽力しており、80以上にのぼる大学等の研究機関と連携して「大学連携研究設備ネットワーク」を運営するとともに、文部科学省の「マテリアル先端リサーチインフラ事業」を通して先端機器の共用を推進しています。