分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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現在のテーマへの興味はどんなところから?

やはり、“モノ作りが好き”というところにつながります。
大学院生のころは、ドロくさいものは扱わず、理想の極限を扱いました。私はこのような世界に憧れつつも、「これが自分の目指していた世界かなあ」という疑問を修士の学生の頃からいつも抱いていました。
“目に見えるもの、形として分かるもの、手に掴めるもの”を研究に取り込めたら、とウダウダと頭の中で考えていました。
こんな背景から、実際のナノ構造体の表面や界面で起こっていることを、電子の動きが生み出す機能として理解したいという現在の研究につながっていきました。
理論は私にとっては手段にすぎないのです。紙と鉛筆の世界に挫折した者の言い訳に過ぎないかもしれませんが、理論のための理論は好きではありません。共同研究者は実験家が多く、読む論文も実験のものが多いですよ。

理論と実験との関係についての考えをお聞かせ下さい。

便宜的に使うには構わないのですが、本当は理論と実験という区別は好きではないですね。理論も実験も研究のための手段にすぎないと考えています。実験設備とか、実験技術とか、実際には諸々の制約があるので難しいですが、ある時期は理論家、ある時期は実験家というように相互に変わってもいいと思うんです。
理論と実験の間に主従関係があるのは好ましくないと思いますね。だから、共同研究も理論と実験の区別無く対等な立場で議論のできる人とするべきだと考えています。手段は違うけれど、興味や価値観が共有できる人ですね。

最も気に入っている仕事は?

毎回、理論ができた時やシミュレーションが旨く進んだ時は達成感を感じますが、すぐに“次に何をやろうか”と考えているので、最も気に入っているというのは思い当たりませんね。
以前、米国大リーグで記録を更新し続けているイチロー選手が「満足することはない」という趣旨の話をしていましたが、研究成果に対する私の考え方も同じだと思います。彼は天才(類い稀なる努力家でもありますが)なので、私も同じ考え方を持っていると人前で話すのは少し恥ずかしいですが。

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