分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 大島 康裕

分子の運動に興味を持つようになったきっかけは?

中学生の頃、水っていうのはH2Oだということを習いますね。そのとき、水がそんなふうに書けるんだっていうことに感心する段階があるわけです。さらに大学では、そして、その水の分子が空間を激しく動き回っているんだということを習います。このとき、“静的”でなく激しく運動しているということに、新鮮な驚きを感じました。これはとってもシンプルな興味ですね。
分子研に来て、どういう仕事するかということを考えたとき、知的好奇心のある人なら誰でもシンプルに面白い、と思える研究をやろうと思いました。
私の考えている究極の興味というのはもう少し別なことなんですが、その前に、“分子そのものの運動を実際に見てみたい”と思いました。分子の運動の様子は、式ではきちんと記述され、誰もが見た気になっているけれど、でも実際誰も見たことがないんです。“見た気”で終わるとそこで“思考停止”すると思います。“見よう”と思うと、どうやったら見えるか、と考えます。そして試行錯誤するわけです。こういう過程で、ものの見方が豊かになり、もっと理解が進むと思うんです。
例えば、分子を右回りだけにそろえられるか?といったことを学生に問いかけるわけです。そうすると、その学生は何度も失敗しながら一生懸命考えるわけです。そして、ついにそういうことができるようになる。分かって見ると意外に“どうしてこんなことに気がつかなかったんだ”というものですけどね(笑)。
次は、回っている様子をもっとビジュアルに、或いはもっとダイレクトに見たいと思っています。

先ほどのお話にあった究極の興味は?

分子が形を変えていく様子、つまり、化学反応を実際に「見てみたい」ですね。

先生の研究の哲学は?

よりシンプルに、より面白く、ということでしょうか。

サイエンスとして本当に重要で面白いことっていうのは、専門家でなくても、知的なことに興味のある人なら理解してもらえるところがあると思うんです。例えば、アインシュタインの相対性理論なんて、きちんと理解できる人はそんなに多くはないと思います。でも、多くの人があの理論の意味するところを分かった気になって、興味を持っているわけですよね。

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