分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 鈴木 敏泰

日本へはどういうきっかけで戻られたのですか?

学位を取得した後、アメリカで就職するつもりでしたが、ちょうどアメリカが就職氷河期で、いったん日本に戻ってきたんです。そのとき、分子科学研究所の助手として最長3年の任期で採用されました。
分子研での任期が終わる頃、日本の大手電機メーカーの研究所から声をかけていただき、再び民間企業へ異動しました。そのとき、有機ELの開発に携わりました。
再び、基礎研究がしたいと思っている頃、ちょうど分子研で新しいセンターを作るという話があり、採用していただくことができました。

それからしばらく、有機EL素子で、発光層を挟む電子輸送層の材料の設計と合成に取り組みました。その頃から、相手から電子を引き付ける性質の強いフッ素に着目していました。この研究は、当時、豊田中央研究所にいらした時任静士さん(現山形大学先端有機エレクトロニクス研究センター教授)と共同で行いました。今でも引用数の多い論文を出すことができました。

その経験が全水素原子をフッ素で置換したペンタセンに結び付いたのですね。

有機ELが一段落してから、有機トランジスタに目を向けて、ペンタセンに取り組んだのです。これはすごい反応でした。強い腐食性を持つフッ化水素と、危険性の高い四フッ化硫黄を150℃で煮るんです。

そんな反応を分子研で行ったのですか?

いえいえ。フッ素の取り扱い技術の蓄積が豊富な企業に頼んでやっていただきました。

全フッ素化ペンタセンはとても作るのが難しい物質なんです。でも、優れた特性を示すので、海外や電機メーカーなどから引き合いが多いですね。

<<前へ [ 1 2 3 ] 次へ>>

Copyright © Institute for Molecular Science, All Rights Reserved.