分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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「有機半導体の設計と合成」に懸ける研究者(鈴木敏泰先生)

半導体といえばシリコンなどの無機物を思い浮かべますが、最近では有機物の半導体による有機EL(発光素子)、トランジスタ、太陽電池が開発されています。例えば、有機トランジスタの有望材料としてペンタセンというベンゼン環が直線状に5つ並んだような炭素と水素だけからできている化合物があります。
先生は、ペンタセンの全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた新規化合物の合成に世界で初めて成功し、ペンタセンの特性をもっと向上させました。

もっと詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
https://www.ims.ac.jp/research/group/suzuki/


研究者になったのはなぜですか?

理科が好きだったというのが大きいでしょうね。

それから、私たちの世代は子供の頃“偉人伝”というのをよく読みましたね。そういう本で取り上げられている科学者に憧れたというところもありますね。

今の研究テーマ「有機半導体の合成」との出会いは?

名古屋大学理学部化学科で、卒業研究と修士課程の2年間を野依教授(2001年ノーベル化学賞受賞)のもとで有機合成を修得しました。もともとは、不斉反応をやっている研究室でしたが、1985年頃には有機電導体が脚光を浴びていたこともあって、私の研究テーマは有機電導体の合成でした。その頃は、有機合成の力はありましたが、分子を設計する力が不十分でうまくいきませんでした。

修士課程を終えて、民間企業の研究所に就職しましたが、基礎研究がやりたいと考えました。そこで、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のフレッド・ウドル教授に自ら手紙を出し、博士課程の学生として受け入れてもらいました。最初のテーマは、有機電導体テトラチアフルバレン(TTF)の両側に酸素を付けたものでした。1ヶ月くらいで作ってしまい、教授からも喜んでもらい、幸先の良いスタートでした。
その後もしばらくTTF系の研究をしていましたが、1990年にアーク放電でフラーレンが生成された論文がNatureに出ると、研究室全体がテーマをフラーレンに変えてしまいました。私は、博士課程の後半で今更テーマを変えたくないという思いがあったのですが教授から「君もやってみたいだろ?」と勧められて「はい」と答えてしまったんですね(笑)。

それで、フラーレンを修飾した化合物を目指して合成を始めました。普通、有機合成はグラム単位で実験を始めるのですが、このときはその千分の1の量から始めなければならず、とても難しい実験でした。でも、比較的すぐに成功することができ、1991年のサイエンス誌に掲載されました。

それが先生の博士論文の仕事ですね。

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