HOME arrow 研究 arrow 研究グループ一覧 arrow 鈴木グループ

協奏分子システム研究センター鈴木グループ

鈴木グループ_メインイメージ
場所:山手キャンパス 4号館5F
Annual Review : こちら

有機半導体,サーキュレン,ナノリング

曲面をもつグラフェン分子の合成と機能開発

ベンゼンは、炭素6個と水素6個からできた六角形の分子です。この炭素リングの上を6個の電子が回っており、これによって分子が安定に存在できます。有機分子の中を自由に動き回る電子をパイ電子といい、光、電気、磁気的な機能をもたせるためには必要不可欠です。この六角形を基本とした安定な化合物を芳香族といいます。また、無数の六角形がハチの巣状につながったものがグラフェンです。グラフェンは、グラファイト(炭)を構成する一枚の平面シートに相当します。グラフェンを一部切り取ってできたものがグラフェン分子ですが、我々は、曲面をもつ特殊なグラフェン分子の合成と機能開発を目標としています。

我々が手本とする分子は、C60というサッカーボール型の分子です。1990年に、炭素電極の
アーク放電という方法で大量合成されました。この分子は、ひずみエネルギーが非常に大きいので、我々の得意とする有機合成で作ることは困難です。C60は20個の六角形と12個の五角形からできています(図左)。この五角形のため、グラフェンのような平面ではなく、ボウル型の曲面構造になっています。C60には超電導、強磁性、n型半導体といった多くの優れた機能が見つかっています。このC60のユニークな性質は、その特異な構造に由来しているということができます。

これまでにないユニークな機能性分子を開発するためには、これまでにない特異な構造をもっ
た分子を設計する必要があります。しかしながら、曲面グラフェン分子は、ひずみエネルギーが大きいため合成は容易ではありません。我々は、六角形と八角形の組み合わせで面白い分子ができないかと考え、[8]サーキュレン1)という分子を合成しました。中心の八角形のため、かなり深いサドル型の構造をしています(図中央)。この分子は、有機p型半導体として機能することがわかっています。

最近、シクロパラフェニレンという複数のベンゼンが環状につながった分子が注目されています2)。これはカーボンナノチューブの最少単位として知られ、ナノリングと呼ばれています。ナノリングは分子の末端がなく、対称性が高いことが特徴です。パイ電子の自由度も大きいため、優れた電子物性が期待されています。我々はシクロパラフェニレンに光電子的な機能を与えることを目的として、カルバゾール4個からなるナノリングを開発しました(図右)3) 。ナノリングには比較的大きな内部空間があり、C60などの分子を内包する機能があることも分かっています。

suzuki_2017.jpg

図 C60(左)、[8]サーキュレン(中央)、およびナノリング(右)の分子構造

参考文献

  1. Y. Sakamoto and T. Suzuki, “Tetrabenzo[8]circulene:Aromatic Saddles from Negatively Curved Graphene,” J. Am. Chem. Soc.135, 14074-14077 (2013).
  2. T. Iwamoto, Y. Watanabe, Y. Sakamoto, T. Suzuki and S. Yamago, “Selective and Random Syntheses of [n]Cycloparaphenylenes (n = 8-13) and Size Dependence of Their Electronic Properties,” J. Am. Chem. Soc. 133, 8354-8361 (2011).
  3. Y. Kuroda, Y. Sakamoto, T. Suzuki, E. Kayahara and S. Yamago, “Tetracyclo(2,7-carbazole)s: Diatropicity and Paratropicity of Inner Regions of Nanohoops,” J. Org. Chem.81, 3356-3363 (2016).