公開講演会

分子の園へどうぞお越し下さい

自然科学研究機構 分子科学研究所 所長
中村宏樹

 

中村宏樹所長10月21日(土)の朝9時半から夕方5時まで、分子科学研究所の一般公開が行われます。市民の皆さんに研究所を公開し、研究所で行われている研究の分かりやすい紹介やデモンストレーション、教授や助教授による講演会、お子さん達が直接参加できる「おもしろ体験イベント」などの企画を沢山準備し、研究所活動への理解を深めて頂くのが目的です。


最近、理科離れが問題になっています。我々の分子科学研究所に加え、基礎生物学研究所と生理学研究所を熱心に誘致して下さった岡崎の皆さんには、そのようなことはないと思いますが、「理科離れ」は国にとっては放置できない深刻な問題です。「基礎科学」の振興は国の将来にとって極めて重要な施策です。基礎科学研究は知的財産を蓄え、新しい文化の礎を築き、国家の基礎体力を養うものです。また、将来の新しい技術開発の源泉となります。分子科学研究所は、岡崎市を初めとする地元の皆さま方、国、全国の分子科学研究者仲間等々の多くの方々のご支援のお陰で昨年、創立30周年を祝うことができました。21世紀における新しい科学の発展に貢献すべく、我々は更なる飛躍を目指して頑張っております。「分子」は眼に見えない「量子」であり、しかも日常の感覚と異なる「量子力学」に支配された世界ですので、どうも「分かりにくい」と言うのが実感のようですが、実はこの世の中のもののほとんどは分子でできているのです。皆さんの身体も実は分子でできており、その様々な働きは全て「分子の機能」の集積なのです。分子の機能をうまく開発し利用すれば、ナノの世界(10億分の1メートルの世界)で、実にエネルギー効率の良い様々な機械やエレクトロニクス部品を将来作ることができるようになるでしょう。自分で故障を修復する「自己修復機械」ができるかも知れません。また、生命体を分子レベルで解明することによって、画期的な医療技術が開発されるようになるかも知れません。「新しい物質科学」と「新しい生命科学」の誕生を目指した地道な研究が行われています。


残念ながら「研究者の説明」は下手で分りにくいのが通説ですが、一般公開では若い新進気鋭の研究者達がまじめに一生懸命説明してくれるはずです。遠慮なく、説明者を困らせる位にどんどん質問をして理解を深めて頂ければ幸いです。分子科学の多様性と重要性を知って頂くべく、色々な企画が準備されております。会場は、本部があります明大寺地区と新しい山手地区の二ヶ所からなります。子供さんたちが参加できる「体験イベント」、研究活動を示す展示やデモンストレーションは両地区で行われます。スーパーコンピューターなどを用いたアニメなどは明大寺地区で、教授・助教授による講演会は山手地区で行う予定です。両会場の間にはシャトルバスを運行しますし、見学ルートのあちこちには休憩場を設ける予定です。じっくりとお好みに応じて見学をしてください。研究者及び最先端科学との直接の触れ合いを楽しんで頂ければ幸いです。科学に直接関係のない質問でも大歓迎いたします。


当日が小春日和の良い日になることを願いつつ、多くの皆さんのご来場を楽しみにお待ちしております。基礎科学への理解を深めて頂き、いささか傾きかけているこの国をしっかりと土台から支えることの重要性を感じ取って頂き、優秀な「将来の科学者」がこの地から輩出されるようになる一助になれば、これにまさる喜びはありません。

合掌