分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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「金属酵素」の研究者(藤井浩先生)

私たちの体の中で起きている化学反応のほとんどに酵素(タンパク質からできています)が関わっています。酵素の中には“金属酵素”と呼ばれる鉄、銅などの金属イオンを含むものがあります。多くの場合、 この金属イオンが酵素反応と直接関係し、生体内でのバラエティーに富んだ反応を可能にしています。例えば、体の中の鉄分が足りなくなると貧血を起こすのも、金属酵素が関係しています。
先生は、金属酵素がどのようなメカニズムで働いているのかを分子レベルで研究しています。


研究者になったのはなぜですか?

卒業研究では、工学部で有機化学の研究室に配属されました。合成をおこないました。その頃、まだ研究者ということは具体的に考えていませんでしたが、もっと化学を勉強したいと思っていました。

高校の化学と大学での化学の一番大きな違いは“電子”の扱いにあると感じていました。それで、量子化学の分野に興味を持ちました。大学院では量子化学を本格的に学びたいと思い、京都大学の工学部へ進学し、物理化学の研究室に籍をおきました。修士課程を終えたら就職するつもりでしたが、もっと研究がしたくなって博士課程に進みました。博士課程を終える頃、大学での研究職への道が運良く開け、研究者になりました。そして、いろいろな方々のお導きのおかげで今日まで至っています。自分で努力してアピールすることはもちろん大切ですが、私の場合は運も半分くらいあると思います。

「金属酵素」の魅力はどんなところ?

金属酵素というのは、生体の中で金属が電子のやりとりをする反応(酸化還元反応)を触媒しています。例えば、体内では酸素分子をうまく利用した反応がたくさんあります。工業的には酸素分子をうまく使うというのは難しい反応なんです。でも、生物は、生命のエネルギーを作る反応、生命の防御に関わる反応、ホルモンを作る生合成、不用となったものを分解する反応などさまざまなところで上手に酸素分子を使っています。このように多彩な酵素反応を可能にしているのは、鉄や銅など、わずか数種類の金属なんです。
また、酸素のない環境下で生きることができる微生物もいます。そういう生物は酸素分子の代わりに窒素分子をうまく利用しています。ここでも、金属は重要な働きをしています。

私は、生命活動を支えるために、酸素分子または窒素分子を使う反応に着目しています。両者の共通点を明らかにすれば生命活動の本質の一部が明らかにできるのではないか、と思ってます。

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