分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

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「バッキーボウル」の研究者(櫻井英博)

サッカーボール型の分子(フラーレン)や、カーボンナノチューブのことを聞いたことがある方が多いと思います。“バッキーボウル”はフラーレンの一部を切り取った、或いは、カーボンナノチューブの先端部分を切り取ったお椀型をした分子の総称です。この分子は形と名前が面白いだけでなく、うまく積み重ねると電気を通すなど、様々な面白い性質を持つ物質であることがわかってきました。

先生は、有機合成化学を専門としており、バッキーボウルの一つである“スマネン”の合成に世界で初めて成功しました。さらにバッキーボウルの研究を発展させるとともに、金属クラスター触媒の研究もしています。
“シンプルかつエレガント”な有機合成ルートを見つけることをモットーとしています。



研究者になったのはなぜですか?

私の場合、家庭環境が大きく影響しているかもしれません。父も祖父も研究者でしたから。
特に父は私と近い分野の研究者でした。
私が子供の頃、父の研究室の学生がよく家に遊びに来ていました。研究室旅行にも一緒についていっていましたし、外国人研究者との交流もありました。

研究者という職業がごく自然の選択肢だったのですね。

今の研究テーマ「バッキーボウル」との出会いは?

もともとは、有機クロムという有機金属化学の分野での研究をしていました。
1993年、博士課程3年の頃でした。博士論文の審査の頃、気分転換に図書館に行って新着のジャーナルを読んでいました。そこで面白い論文を見つけたんです。有名な先生が書いた論文で、“スマネン(最もシンプルなバッキーボウル)の合成ができなかった”というものでした。普通、論文というのは“できた”ということを報告するものなので、“できなかった”ということを報告した論文というのはとても珍しいんです。


そこで描かれているスマネンの構造はとてもシンプルでした。そして、こんなシンプルなものがまだ合成できないんだ、という我々の分野がまだまだ未成熟なんだという愕然たる思いとともに、“よし、作ってやろう”と思うようになりました。

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