分子研の散歩道1 研究者のよこがお

 

TOPページ > 平等 拓範

「近接場光学顕微鏡」の研究者(岡本裕巳先生)

小型化することによって、よりレーザーの性能を向上させる。こんなおいしい話があるのでしょうか?
ミクロン単位で性質のそろった物質のかたまり“(マイクロ)ドメイン”を高精度に制御することで、目的とする光機能に最適化した固体レーザーができるのです。
先生は、固体レーザーの“小型化による高性能化”をどんどん発展させています。

もっと詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
https://www.ims.ac.jp/research/group/taira/


研究者になったのはなぜですか?

私たちの世代(1960年生まれ)というのは、アポロ計画で月面に人が降り立つニュースに興奮し、また『鉄腕アトム』を見て楽しんで育ち、科学の発展により可能性が広がり我々の世界が良くなる、と素直にそのように信ずることが出来ました。私もその一人です。
次に、何故、光の分野に興味を持ったかと言う事ですが、最初は電気を勉強するために大学に行きましたが、その過程で電磁気学や量子力学の面白さを知りました。そして学部時代にハイゼンベルグの「部分と全体」を読み大変感銘を受け、特に“光”に大変興味を持つようになり、レーザーの研究室を選びました。
でも、最初からアカデミックな研究者を目指していたわけではありませんでした。工学系の修士課程を終えて民間企業に就職したとき、実は、数年したらベンチャー企業を興そうと思っていました。つまり、社会情勢を知るために最初、大企業へ就職しようと。

ところが大会社の研究所は、種々の環境が整備されており、居心地が良くて(笑)、初志が揺らぎかけていました。マイクロプロセッサー(MPU)、特に国産の先進的オペレーティングシステム(OS)であるトロン(TRON)に適したMPUであるトロンチップの開発研究に携わっていたのですが、アメリカとの貿易摩擦が問題化し、日本の方針として米国製を使うように決まったんです。大変残念でした。その頃、偶然に出身研究室から“助手のポストが空いたから来ないか”と誘われ、この道を進むようになったんです。

今の研究テーマ「マイクロ固体フォトニクス」との出会いは?

助手をしていた頃は、大気中のオゾンやエアロゾル等の環境物質の空間分布や、気温、風向・風速など環境計測を目的としたレーザー分光、レーザーレーダーの研究に従事していました。
そこでは高輝度の光源が必要で固体レーザーを使っていました。しかし当時の固体レーザーはなかなかやっかいで、観測よりもレーザーの調整時間の方が長い、という状況でした。そこで、真空管からLSIへという技術の進歩と同様、小型化・集積化することによってレーザーを高性能化することができないか、と考えました。これが“マイクロ固体フォトニクス”のはじまりです。でも、最初どこから手をつけていいかわかりませんでした。

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