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有機物で光・電子材料を作る
有機半導体,サーキュレン,ナノリング
基本的な有機物であるベンゼンは、炭素6個と水素6個からできています。六角形の炭素リングの上を6個の電子が回っており、これによって分子が安定に存在できます。有機分子の中を自由に動き回る電子をパイ電子といい、光、電気、磁気的な機能をもたせるためには必要不可欠です。この六角形を基本とした安定な化合物を芳香族といいます。これまでに無数の芳香族分子が知られていますが、我々が目標とするのは、C60フラーレンのようなスーパースター分子です。C60はサッカーボールと同じ形をした物質で、20個の六角形と12個の五角形から構成されています。1990年に、炭素電極のアーク放電という方法で大量合成されました。C60には超電導、強磁性、n型半導体といった多くの優れた機能が見つかっています。このC60のユニークな性質は、その特異な構造に由来しているということができます。
これまでにないユニークな機能性分子を開発するためには、これまでにない特異な構造をもった分子を設計する必要があります。我々は、六角形と八角形の組み合わせで面白い分子ができないかと考え、[8]サーキュレン1)という分子を合成しました。中心の八角形の周りを六角形が囲んでおり、ポテトチップスのようなサドル型の構造をしています。この分子は、有機p型半導体として機能することがわかっています。最近、シクロパラフェニレンという複数のベンゼンが環状につながった分子が注目されています。これはカーボンナノチューブの最少単位として知られ、ナノリングと呼ばれています。我々はシクロパラフェニレンに光および電子的な機能を与えることを目的として、カルバゾール4個からなるナノリングを開発しました2)。また、有機n型半導体として、完全にフッ素化したルブレン分子の合成も行っています3)。
Molecular structures of C60, [8]circulene, carbazole nanoring, and perfluororubrene.