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2014/03/28

プレスリリース

細胞の中の「タンパク質分解装置」が出来上がる新たな仕組みを解明(加藤グループら)

[ポイント]

自然科学研究機構分子科学研究所 / 名古屋市立大学大学院薬学研究科の加藤晃一教授、東京都医学総合研究所の田中啓二所長、名古屋市立大学大学院薬学研究科の佐藤匡史准教授らの研究グループは、プロテアソーム(注1)を構成する部品の一つでその活性を調節するタンパク質と、そのシャペロン(注2)として機能するNas2との複合体の立体構造解析に初めて成功しました。
近年、プロテアソームの働きを抑える薬は抗がん剤として世界中で使用され、大きく注目されています。今回、プロテアソームが形成される新たな仕組みが明らかにされたことで、従来の医薬品とは異なる作用機序をもつ新規医薬品の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Structure」のオンライン速報版で3月27日正午(米国東部時間)に公開されます。

 

[研究の背景]

生命システムの維持には、構成要素である分子素子(タンパク質など)の間の秩序だった相互作用が必要不可欠です。例えば、細胞内においてタンパク質分解の中心的な役割を担っているプロテアソーム(注1)は、多種多様なタンパク質から構成される巨大な酵素複合体であり、その形成過程には一時的に複合体に組み込まれては外れていくシャペロン(注2)としての役割を演ずるタンパク質がいくつも関与しています。これまで私たちのグループでは、タンパク質の立体構造研究を通じてこれらシャペロンタンパク質が働く仕組みを明らかにしてきました。タンパク質分解装置としてのプロテアソームのなかで、その働きを担うタンパク質複合体(活性調節タンパク質複合体と呼ばれる)は、6つのよく似た部品から出来ているため(図参照)、間違った並び方をした不良品が出来てしまう可能性が考えられます。そこで、シャペロンタンパク質が言わば「型枠」としての役割を演じることによって、プロテアソームを効率的にかたちづくることが明らかになってきました。しかしながら、これらシャペロンの中でNas2と呼ばれるタンパク質の構造と役割が唯一不明であったので、プロテアソームが出来上がる仕組みの全貌はわかっていませんでした。

 

[研究の成果]

私たちの研究グループは、プロテアソームを構成する部品の一つでその活性を調節するタンパク質と、Nas2との複合体の立体構造解析に初めて成功しました。その結果、Nas2は、活性調節タンパク質複合体が組み上がるまでの間、タンパク質分解の中核をなすプロテアーゼ複合体が合体しない様に一時的にブロックすることで、未完成な部品からなる不良品装置による暴走を抑える機能を果たしていることがわかりました。言わばドミノ倒しで使われる「ストッパー」の役割です。プロテアソームは、こうした仕組みを通じて効率良く出来上がっていくことが、本研究を通じて初めて明らかになりました。

201403_fig.jpg

Nas2とプロテアーゼの活性調節タンパク質(Rpt5)の3次元構造(左)。プロテアソームが出来上がる過程において、Nas2は活性調節タンパク質とプロテアーゼ複合体との間の相互作用を一時的にブロックする(中央)。

 

[この研究の社会的意義]

プロテアソームの働きを阻害することによってがん細胞を死滅させることができることから、現在、プロテアソーム阻害剤は様々ながんの治療薬として注目されています。今回、プロテアソームが形成される新たな仕組みが明らかにされたことで、従来の医薬品とは異なる作用機構をもつ新規医薬品の開発に大きな手掛かりを与えます。

 

[用語説明]

注1)プロテアソーム:細胞内においてタンパク質の分解を行う巨大な酵素複合体(総サブユニット数約100個)で、すべての細胞に普遍的に存在して生命活動に重要な役割を担っている。
注2)シャペロンタンパク質:シャペロンとは本来「介添え人」という意味で、他のタンパク質が正しくかたちをととのえるのを手助けするタンパク質の総称である。

 

論文情報

掲載誌: Structure(ストラクチャー)
論文タイトル:Structural basis for proteasome formation controlled by an assembly chaperone Nas2 (アッセンブリーシャペロンNas2によって制御されるプロテアソーム形成の構造基盤)
著者:Tadashi Satoh, Yasushi Saeki, Takeshi Hiromoto, Ying-Hui Wang, Yoshinori Uekusa, Hirokazu Yagi, Hidehito Yoshihara, Maho Yagi-Utsumi, Tsunehiro Mizushima, Keiji Tanaka, Koichi Kato

掲載予定日:オンライン速報版で3月27日正午(米国東部時間)に公開予定。

 

研究グループ

本研究は、自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター / 分子科学研究所(加藤晃一教授)、名古屋市立大学大学院薬学研究科(加藤晃一教授、佐藤匡史准教授)、東京都医学総合研究所(田中啓二所長)、兵庫県立大学(水島恒裕教授)との共同研究により行われました。

 

研究サポート

本研究は、文部科学省ターゲットタンパク研究プログラム、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現」等のサポートを受けて実施されました。

 

研究に関するお問い合わせ先

加藤 晃一(かとう こういち)
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター / 分子科学研究所 生命環境研究領域・生命分子研究部門 教授
名古屋市立大学 大学院薬学研究科・生命分子構造学分野 教授
TEL: 0564-59-5225 FAX: 0564-59-5224
E-mail: kkatonmr_at_ims.ac.jp

 

報道担当

自然科学研究機構 分子科学研究所 広報室
TEL/FAX  0564-55-7262
E-mail: kouhou_at_ims.ac.jp

公立大学法人 名古屋市立大学大学院薬学研究科 事務室 事務長 三浦伸介  
TEL 052-836-3401  FAX:052-834-9309
E-mail:miura-shinsuke@sec.nagoya-cu.ac.jp