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機能性分子材料の電子物性評価
有機半導体物性、波動関数分布、弱い相互作用、自己組織化、電子分光
エネルギー・環境問題に対応すべく、有機半導体と呼ばれる機能性を示す分子群を利用したソフトデバイス(太陽電池やフレキシブル照明など)の研究が賑わいを見せ、多彩な構造の分子材料が日夜設計・開発されています。しかし依然として個々の分子の特徴を区別し要望されるデバイスの中で適切な材料として自在に活用することができていません。これは本来の特性として絶縁物たる分子群が「有機半導体」として材料機能を示す理由とその真の特徴を認識できていないことに帰着します。具体的には、デバイスにおける無機物(金属電極等)が接する界面における分子の変性はもちろんのこと構造異方性の高い凸凹した分子界面の原子レベルでの相互作用についての理解が全く不十分であるということです。また諸物性の発現機構や原理(相関や因果)、その制御のための量子論的な理解が不十分で、適切なガイドラインが構築されぬまま手探り状態の応用研究が続けられていることを意味します。
光電子分光法による電子状態測定は「分子の中の電子の姿」を量子論的に明らかにする上で極めて有効ですが、分子材料に対する実験的な難しさ(試料作製方法、光損傷や帯電回避法など測定技術)などから、電気伝導特性の中身とリンクさせることが容易ではありませんでした。近年ようやく技術が成熟し、高感度角度分解紫外光電子分光(ARUPS)の実現による研究成果が積み重ねられ、有機半導体の電子の特徴が見え始めています。分子集合体における電子と振動の協奏現象が電子の"局在性の度合い"を大きく操作し物理現象を支配します。こうした弱い相互作用に特徴づけられる電子物性について重要な話題を提供していきたいと考えています。
A rich assortment in the structure of functional molecular materials and variety in the photoelectron spectral feature.