グループリーダー
原子層物質のナノ構造作製、光物性制御、光機能開拓
半導体、二次元物質、光物性、光科学
現代の電子デバイスは微細化の限界に直面しており、新たな技術的革新が求められています。その解決策として、光と量子効果を融合させた革新的な材料の開発が注目を集めています。このような次世代材料は、従来の半導体では実現できない優れた光学特性を示す可能性を秘めています。
私たちの研究グループは、原子1層分の厚さしかない「原子層物質」、特に遷移金属ダイカルコゲナイドに着目しました。この物質群は、光との相互作用が極めて強い直接遷移型のバンドギャップを有し、その極限的な二次元性から特異な電子物性を示します。さらに注目すべき点として、異なる原子層物質をファンデルワールス力により積層することで、人工的なヘテロ構造を構築できることが挙げられます。
このヘテロ構造において形成されるモアレ超格子では、光励起により生成された電子と正孔がクーロン力で束縛された「励起子」が、周期的なポテンシャル中に空間的に閉じ込められます。私たちは、WSe2とMoSe2を組み合わせたヘテロ構造において、このモアレポテンシャルによる励起子の局在化現象の観測に成功しました。さらに、層間励起子の形成過程とその光学応答特性を詳細に調べ、円偏光特性や量子コヒーレンスの測定を通じて、モアレ励起子の量子状態の解明を進めてきました。
現在は、原子層物質のナノ構造作製技術の確立と、光-物質相互作用の精密制御を通じて、新規光学現象の探索と革新的な光機能性材料の開発を目指しています。
Left: Schematics of nanofabrication process for atomic-layer materials. Right: Visualization of quantum optical phenomena emerging from the engineered atomic-layer nanostructures