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大学院教育

総研大生コラム - 櫻井 扶美恵さんの体験記

分子科学研究所 若手育成基金 特別奨学生の声

櫻井 扶美恵さん
機能分子科学専攻4年(執筆当時)
分子研レターズ 66号 掲載(2012年9月)

私は昨年度の10月に分子科学研究所特別奨学生に採用されました。現在、機能分子科学専攻の博士課程4年生として錯体触媒研究部門・魚住グループに所属しており、博士課程3年次に本奨学生の採用試験を受験しました。

分子研特別奨学生として採用されると、年額最高250万円が最長3年間支給され、支給された奨学金の返還義務はありません。しかし、その分受験生にとってはなかなか大変な試験内容となっており、これまで行ってきた研究とこれから進める研究について約30分間英語でプレゼンテーションを行わなければなりません。また、質疑応答・基礎学力に関しての口頭試問も30分程行われます。特別奨学生の採用試験は毎年8月末に行われ、総研大3年次編入希望者の場合は奨学金採用試験と大学院入試を兼ねることができます。私が本採用試験を受験したのは実は2度目であり、総研大の入学試験の時(当時の学年は修士課程2年)に一度挑戦したことがあったのですが、その時は残念ながら不採用でした(もちろん入試には合格しました)。簡単な試験ではないということを理解していたものの、「自分には何が足りなかったのか」「博士課程に進学したらどのような目標をもって過ごすべきか」などいろいろ考えるようになりました。そして1年後には必ずまた挑戦しようと思い、昨年の8月に再び採用試験を受けました。

試験の準備で苦労した点はいくつかありますが、やはり一番大変だったのは英語の発表原稿を作成することでした。しかし魚住研究室に所属して以降、セミナーや日常会話などにおいて積極的に英語と向き合っていたこともあり、初めて受験した時に比べて慌てずに準備することができました。また、発表後の質疑応答に備え、どのような質問が出てくるのかある程度予想を立てて、それに対する自分なりの答えを用意し試験に臨みました。当日の試験は非常に緊張しましたが、1年前に受けた試験の反省点をきちんと踏まえて準備を進めていた甲斐もあって、2度目の試験で無事に合格することができました。本試験を通じて学んだことはたくさんありますが、諦めないで挑戦し続けることの大切さを改めて感じることができました。英語でのプレゼンテーションや30分間の口頭試問という試験内容はなかなか大変なものですが、このような機会はあまり多くないと思うので、分子研に所属する学生の方はもちろんのこと、今後総研大へ入学希望される方も是非とも積極的にチャレンジしていくべきだと思います。

特別奨学生として採用されてから、より自分に自信をもって日々の研究生活が送れるようになり、少し難しそうに思える事でもどんどん積極的に挑戦していきたいと思うようになりました。将来は製薬企業で新薬の研究・開発に携わりたいと考えており、修士課程まで名古屋市立大学薬学研究科にて有機化学を専攻していました。修士課程修了後、3年次編入学で分子研に来たのですが、分子研は設備が非常に充実していて、これまで自分で扱ったことのないような機器(TEMやESI-MSなど)を自分の手で操作する事ができるようになりました。さらに、他大学に比べて教員やスタッフの方々とより多くディスカッションができる環境にあるため、様々な知識をたくさん吸収する事ができ、また研究の進め方も着実に身に付きつつあります。自分の将来の夢を実現するためにも、今後も実験のスキルをより一層磨き、様々な分野の研究者とのコミュニケーションを大切にしていきたいと思っています。また、自分の研究生活に対する意識が変わっただけでなく、経済的な面においても良い変化がありました。分子研では全学年次の大学院生に対してリサーチアシスタントなどによる支援を行っていますが、今回特別奨学金をいただけるようになったことによって、経済的な面での心配をすることなく、その分より集中して研究に取り組めるようになったと思います。しかしながら、それと同時に”特別奨学生”というプレッシャーも感じています。上記で述べたように、分子研特別奨学金は返還義務のない奨学金であるため、毎月支給される度に「今の自分は特別奨学生として相応しいだろうか」「この奨学金をいただけるだけの事をしているだろうか」と自分に問いかけるようになりました。現在私は分子研で日々楽しく研究生活を送っていますが、たまには研究等において上手くいかない事があったり少し苦しいなと思う事もあったりします。しかしこの“特別奨学生”というプレッシャーを感じることにより「これくらいでへこんでいてはいけない!」と自分を奮起させて、今日もこつこつと研究に取り組んでいます。このように、特別奨学生は私にとってプレッシャーだけでなく励みにもなっています。

分子研に来てから既に1年と4か月(特別奨学生として採用されてから10か月)が経ち、総研大に入学してから現在までの研究生活を振り返るとあっという間ですが、本当に多くの事を学び充実した研究生活を送っていると思います。これからも特別奨学生として日々精進し、研究を楽しみながらどんどん自分を高めていきたいと思いますので宜しくお願いいたします。