分子科学研究所

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大学院教育

総研大生コラム - 辻 裕章さんの体験記

分子科学研究所 若手育成基金 特別奨学生の声

辻 裕章さん
機能分子科学専攻3年(執筆当時)
分子研レターズ 66号 掲載(2012年9月)

総合研究大学院大学5年制博士一貫制過程3年の辻裕章です。本年度から分子科学研究所特別奨学生として生命・錯体分子科学領域・魚住グループに所属しています。本コラムでは、分子研特別奨学生という制度を知ったきっかけと分子研特別奨学生に応募した理由、採択後にどのような目標を掲げ、それを実現するために何をするかについて以下に述べたいと思います。

 私が以前在籍していた鳥取大学の学部四年生の3月だったと思います。同大学大学院進学を決め、来月には後輩たちが研究室に配属される頃「6月の分子研オープンキャンパスにいかない?」「でっかいNMRとか見た事ない実験機器が見れるよ。行ってきたら。」と先生や先輩方から勧められました。よくよく話を聞くと、交通費や宿泊施設も提供してもらえるということでしたので、小旅行気分で研究室の同期とともに参加する事にしました。そして、この分子研オープンキャンパスの中で特別奨学生制度の説明を受け、初めてその制度を知る事になったのです。

 しばらくたち、研究室の同期は就職活動を始め、私も就職するのかそれとも進学するのか、自分の進路について考える時期を迎えました。私の気持ちとしては、博士後期課程に進学してもっと勉強や研究をしてみたいという意志がありましたが、進学後の学費や生活費をどうするかが悩みの種でした。そんな時に分子研特別奨学生制度の事を思い出し、募集要項を調べてみると「年間250万円もの支給があり、返還する必要がない」というすばらしいものだとわかったのですが、試験内容が自分の研究内容と進学後の研究内容について「英語」で30分口頭発表し、質疑応答(これは日本語でも可)と基礎的な質問を10分間というものでした…(研究室の先生や同期に伝えたら、「英語」で発表することに驚いてました)。それまで英語はおろか日本語での口頭発表の経験もなかったので、応募するかどうか迷いましたが、この奨学金を獲得すれば経済的な援助を受けながらもっと勉強や研究ができるし、「英語」の発表にも挑戦してみたいという気持ちがあって分子研特別奨学生に応募することに決めました。

 試験本番までに口頭発表の練習を100回行って望んだ結果、幸いにも分子研特別奨学生に採択され、実際にその通知を受け取ったときは、嬉しい気持ちと不安な気持ちの入り乱れた状態だったことを覚えています。そのような気持ちを整理するために、私は採択後の目標を掲げそれをどうやって実現していくかを考える事にしました。

 私は、現状に満足せず、常に向上心をもって新しい事に挑戦できるのが優秀な研究者だと考えています。なぜなら、研究者には自分に与えられた仕事をこなすだけではなく、独創的な展開をする能力や自分の研究を客観的に見る能力も必要だからです。私は分子研特別奨学生に採用されましたが、これは優秀な研究者になるための一つの通過点だと考えております。まずは研究室のスタッフや分子研の皆さん、さらに分子研以外の研究者から「分子研特別奨学生としてふさわしい人物」と思われる様に努力することが第一の目標です。そのために、分子研特別奨学生は分子研の学生の中から選ばれた代表であるという自負の基に研究を行い、国内外を問わず学会に積極的に参加することで、研究成果の発表や研究者との交流を行っていきたいです。そして、将来的には日本に限らず世界の研究者達から「優秀な研究者」だと認められることを目標にして精進していきたいと思います。

 私の所属している魚住グループでは毎週土曜日に行われるセミナーの中で、最新の論文を紹介し、議論を行っています。言語は英語であり、スタッフの皆さんの議論も難しいので、付いていくので精一杯ですが、私はこのセミナーを通して自分の研究分野に関する基礎知識の無さを感じると共に、このままでは目標の達成にはほど遠いと感じました。このことから、基礎知識を習得するために勉強に励み、自分が行っている研究の背景、世界的な位置付けや意義を理解して、それを第三者に対して分かりやすく説明する事を常に考えていることが、分子研特別奨学生として、さらに優秀な研究者として認められることへの近道ではないかと考えています。

 最後に、私を評価し分子研特別奨学生に採択して頂いたことに感謝するとともに、その期待に答える活躍をしていきたいと思います。