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2007/05/28

アウトリーチ

日本学術会議化学委員会・分子科学研究所・日本化学会共催「化学の存在感とあるべき姿」に関する研究会開催報告

日本学術会議化学委員会・分子科学研究所・日本化学会共催の所長招聘研究会を5月9日岡崎コンファレンスセンターで行った(参加者76名、学術会議会員・連携会員43名)。この研究会は毎年、全国の研究機関を代表する研究者が集まり、大学・大学院での化学教育と研究の改善に向けての改善策を見出すことを目的としており、本年度(第6回)の討論主題「化学の存在感とあるべき姿」に関して、岩澤康裕・日本学術会議化学委員会委員長が趣旨説明と中村宏樹・分子科学研究所所長から本研究会開催の意義について説明があり、会議を開始した。

 

第一部「大学院教育高度化」では、野依良治氏(理化学研究所 理事長)が 「明日の社会のために大学院教育の抜本的改革」として今後、国際的に通用する人材の育成には大学院学生の流動性の向上が是非とも必要であるとの意見を述べられた。次に出口尚安氏(JCII産学人材WG主査)は産業界から見た人材育成のあり方について、岩澤康裕氏(東京大学教授)は東京大学の理学系大学院では「物質」「生命」「宇宙」「環境」をキーワードにした教育プログラムを新しくスタートさせ、企業技術部門の方々を講師に招き最新の科学技術論や外部の講師による「科学コミュニケーション・インタープリテーション」を開講していることを紹介された。

 

第二部「アジア化学イニシアティブ」では藤嶋昭氏(日本化学会会長)がアジアからの留学生に対して、自ら率先して行った教育・研究指導の経験談と、その後、彼等がそれぞれの母国で指導者として活躍していることを紹介された。鯉沼秀臣氏(東京大学客員教授)はアジアからの留学生の現状と、日本へ優秀な学生を集めることへの取り組み方、パキスタンからの工科大学創設に関する要望についての説明がなされた。大塩寛紀氏(筑波大学教授)は錯体化学界が独自にアジア諸国との連携強化のために行っている行動計画と説明があり、中国からの論文発表の急激な増大を紹介された。

 

第三部「魅力ある大学院研究教育環境・運営基盤」では山脇良雄氏(文部科学省科学技術・学術政策局基盤政策課長)が「科学技術関係人材の育成方策」として現在、社会的に大きな問題となっている「理数教育」「ポスドク問題」「女性研究者雇用改善問題」等に関する文部科学省の行動計画について説明された。川合知二氏(大阪大学産業科学研究所所長)は「大学における研究環境基盤のあるべき姿」として運営交付金の減額、競争的外部資金の獲得ならびに設備費の減少についての現状分析と将来展望から、機関を超えた共同体制の構築の必要性を述べられた。最後に西信之氏(分子科学研究所教授)が分子科学研究所が提案した「化学系汎用機器共同利用ネットワーク」が全国の各大学の機器分析センター等の協力で5カ年計画として動き出している現状が報告された。

 

第1,2,3部とも講演後の議論が噴出し大幅な時間の遅れが生じ、最後に全体討論として「化学の存在感とあるべき姿」に関して活発な自由討論がもたれ、懇親会が40分以上遅れでスタートとなったが、その会場でも個々の参加者の討論が続き、大学院教育問題とアジアとの連携の問題に対する参加者の関心の高さが感じられた。講演内容とともに、その後の活発な議論に関しても非常に有意義な研究会であったと思われる。

(文責 田中晃二)

関連リンク

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