お知らせ
2007/08/30
研究成果
物質分子科学研究領域の七分勇勝研究員、佃達哉准教授の研究グループは、金13量体(Au13)クラスターがふたつ連結したひょうたん形のAu25クラスターの合成に成功しました。
100個以下の金属原子が集まってできた超微粒子(金属クラスター)は、我々が日常的に目にする金属の固まりでは見られないユニークな構造や性質を示すことが知られています。なかでも、「魔法数」と呼ばれる、特殊な数の原子が集まってできた金属クラスターは、特に高い安定性をもつことから、機能性物質やデバイスを作るための基本単位として有望視されています。魔法数クラスターを規則正しく集積化すると、どのような集団効果・相乗効果が発現するのかは興味深い問題です。
今回、トリフェニルホスフィン(PPh3)で保護した金11量体(Au11)クラスターとアルカンチオール(CnH2n+1SH)を反応させると、[Au25(PPh3)10(SCnH2n+1)5Cl2]2+という組成の化合物が生成することが質量分析法によって見出されました。この金25量体(Au25)クラスターの単結晶(図A)を作成し、X線構造解析を行なったところ、二十面体構造をもつAu13魔法数クラスターが1原子を共有しながら連結した双二十面体構造をもつことがわかりました(図B)。図Bを詳しく見ると、チオラート配位子が二つのクラスターを架橋することによって、一見不安定な双二十面体構造を保持している様子がわかります。Au13クラスターが連結することによって、どのような性質が新たに発現するのでしょうか?例えば、Au25クラスターの光学的な性質を調べてみると、Au13クラスターでは見られない吸収ピークが670nm付近に出現し、これを光励起すると近赤外領域の発光を示すことが明らかになりました(図C)。Au13魔法数クラスターが二量化してできたこの化合物は、クラスターを規則的に集積化した超構造体の機能と構造の相関を理解するための、最も単純なモデルであると言えます。現在、Au25クラスターの構造や光学特性については、理論・計算分子科学研究領域の信定克幸准教授の研究グループによって、理論的な裏付けがなされつつあります。さらに、3個以上のAu13が連なった集積体の構造と物性についても理論的な予言がなされており、実験による今後の検証が待たれるところです。
この成果は、生命・錯体分子科学研究領域の川口博之准教授の研究グループとの共同研究により得られたものです。
図:配位子で保護されたAu25クラスターの(A)単結晶(SbF6塩),(B)骨格構造(黄色が金原子を表す),(C)紫外・可視吸収スペクトル(赤)および発光スペクトル(青).
発表論文
雑誌:J. Phys. Chem. C (Letters),第111巻,7845-7847ページ(2007年)
題目:Biicosahedral Gold Cluster [Au25(PPh3)10(SCnH2n+1)5Cl2]2+ (n=2-18): A Stepping Stone to Cluster-Assembled Materials
著者:七分勇勝、根岸雄一、渡邉孝仁、ニルマニヤ チャキ、川口博之、佃達哉
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