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2007/12/17

研究成果

ナノメーターサイズの銀粒子を、多量に、しかも、簡単に、一次元に並べる方法を開発(西グループ)

ナノテクノロジー・ナノサイエンスの発展にともない、ナノメートルサイズの粒子を作成する様々な手法が確立されてきています。これらナノ粒子の機能を利用する際には、粒子を特定の形状に並べることも重要となります。しかし、ナノ粒子のように極めて小さく、しかも凝集しやすい物体を自在に配列するには、未だに多くの困難が存在します。例えば、ナノ粒子を直線状に配列させる場合は、通常は細いワイヤー状の物質を鋳型としてこれにナノ粒子を付着させるという手法が用いられていますが、手間がかかる上に、ナノ粒子が過剰に凝集した部分や付着しなかった部分が生じやすいという問題があります。

 

今回、西グループの西條純一助教らは、一般に行われている「ナノ粒子を集積して1次元状に並べる」という発想を逆転し、既に1次元状の形状をしているナノワイヤーをナノ粒子の集合体へと変換することで、ナノ粒子の一次元配列を簡便かつ大量に作成することに成功しました。本手法では出発物質として、銀イオンと有機分子(フェニルエチニル)が多数組み合わさってできた超長クラスター分子(図A)を用いています。この超長分子は非常に異方性の強い結晶構造をとることが知られていましたが、今回その再結晶法を新しく開発することで、太さを制御したナノワイヤーへと変換することに成功しました(図B)。このナノワイヤーに紫外光を照射すると、もともと強い還元性を持っているフェニルエチニルが銀イオンを還元し、生じた中性の銀原子が凝集することで銀ナノ粒子が生じます。一方、同じく中性化したフェニルエチニルは反応性の高い三重結合を持つため、紫外光によって隣接する分子と重合して有機ポリマーへと変換されます。この有機ポリマーがナノワイヤーの構造を保つことにより、光分解の過程においても初期のワイヤー状構造が維持されることとなります。この結果、紫外光を照射するだけでナノワイヤーの各部位が銀ナノ粒子に変換され、自動的に1次元に配列した銀ナノ粒子を得ることが可能となりました(図C)。本手法はナノ粒子を集積するという既存の方法に比べ、簡便に大量の1次元ナノ粒子列を作成できることや、ナノ粒子が過剰に集ったり不足したりする部分がなく均一に分布するという利点があり、さらに、生じた有機ポリマーが銀ナノ粒子を包み込み酸化を防ぐため、生じたナノ粒子列が安定であるという優れた特性を持っています。

 

本研究はChemistry of Materials誌に発表されるとともに、MRS Bulletin誌の11月号において最近の注目研究として紹介されました(MRS Bulletin 第32巻 881-882ページ)。

 

発表論文

雑誌:Chemistry of Materials アメリカ化学会,第19巻,4627-4629ページ(2007年)
題目:Facile and Mass-Producible Fabrication of One-Dimensional Ag Nanoparticle Arrays
著者:西條純一,大石修,十代健,西信之

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