お知らせ
2009/03/18
お知らせ
技術課計算科学技術班長の水谷文保氏が、「計算分子科学研究のための大型計算機運用管理技術と先進的計算機活用技術の開発」に関する業績により平成20年度日本化学会化学技術有功賞を受賞され、日本化学会第89春季年会において表彰されました。
今回の受賞対象となった水谷氏の業績を簡単に紹介いたします。分子研電子計算機センター(現計算科学研究センター)へ水谷氏の異動と前後して、センターにある汎用およびスーパーコンピュータのOSがそれまでのVOS3(大型機のOS)からUNIXへと変わり、また複数の異なる種類の計算機から構成された分散計算機環境へと変化しました。これらの変化への対応するために水谷氏は分散処理環境における障害監視システムを開発し、全国共同利用マシンの安定運用を実現してきました。また、ほぼ二年毎の繰り返される大仕事である汎用およびスーパーコンピュータのシステム更新においても、仕様策定からマシンの移行・導入・立ち上げ等の重要な役割を担うだけでなく、ジョブ投入環境、ジョブフロー監視およびCPU負荷状況監視ソフトウェア等の提案・開発を進め、分子科学分野に安定で世界最高水準の計算環境を構築し全国の共同利用研究者に提供してきました。さらに、NAREGIプロジェクトにおいては、国内の産学官のナノサイエンス研究者に省エネルギー化を実現した安定な計算環境を提供し、最新グリッド環境の運用を通してグリッド実証研究に多大な貢献をしてきました。
また、水谷氏はwebの応用技術開発についてもインターネット普及当初から積極的に進めてきました。分子軌道計算の結果からブラウザを通じて高画質の分子・電子雲の3次元表示ツールPGVの開発、センター利用のためのオンラインマニュアルや情報交換環境など共同利用の環境整備にも取り組み、それらを全国の研究者に公開してきました。最近では、多数のアプリケーションを連携させる変換ツールGIANTを開発し、マルチフィジクスに関わる研究推進にも大きな貢献をしています。
このように、水谷氏は全国共同利用および産学官連携プロジェクトにおける「大型計算機の導入と安定した運用管理技術の開発」および「計算機の先進的活用技術の開発」を進め、我が国における理論・計算分子科学研究の推進をしっかりと支えてきてくれました。
分子研および計算科学研究センターのメンバーとして、さらに施設利用している一ユーザーとして、今回の受賞を心よりお祝い申し上げるとともに、今後のさらなるご活躍を期待します。
(斉藤真司)
日本化学会第89春季年会において表彰された水谷文保氏