お知らせ
2009/11/28
お知らせ
自然科学研究機構・分子科学研究所 所長 中村宏樹
行政刷新会議の下に行われている「事業仕分け」において、国立大学及び大学共同利用機関の運営費交付金と特別教育研究経費の見直し・縮減が決められました。
予算の無駄を除くための仕分け作業の主旨は理解しますが、天下り問題等とは異次元の学術研究、科学技術予算を同一レベルで、しかも十分な議論のないまま短時間で縮減を決めることは、大きな問題をはらんでいます。大学や我々のような大学共同利用機関は既に毎年予算削減を受けてきており、厳しい状況にある中でこれ以上の大幅な削減が行われると、研究活動の中断を余儀なくされます。これは一時的な中断だけですむものではなく、研究成果の枯渇や人材の育成の中断を意味し、日本の将来に大きな禍根を残します。教育の劣化と共に、我が国が2流~3流国家に転落してしまいます。環境分野などの技術革新で世界をリードすると謳われた民主党のマニフェストの実現も、その根幹が揺らぐことになります。
分子科学研究所は我が国のみならず世界における分子科学研究の中核的研究機関として、分子およびその集合体の構造・機能、化学反応、生体分子の機能等々の科学研究において世界を先導する研究を進めています。これらの研究成果は基礎的学術研究として「物質」や「生命」の基本的成り立ちに関する人類の理解を著しく深めただけでなく、民主党のマニフェストにも盛り込まれた「地球温暖化(環境・エネルギー問題)」など人類が直面する課題を解決する上で最も基本的な知見と方法論を与えるものであります。今回の「業務見直し作業」の中で予算削減の対象になった「特別教育研究経費」の中には当研究所の極端紫外光研究施設、シミュレーション中核拠点および設備ネットワークプログラムが含まれています。これらの研究施設および研究拠点は共同利用研究機関としての分子科学研究所における研究を推進する上で欠くことのできない要素であり、その予算削減は今後の研究の遂行や人材の育成に大きな障害となることは明らかであります。
以上の視点から、我々は新政府に対し、「エネルギー・環境」問題など全人類的課題をしっかりと見据えた国家予算の編成に取組むこと、また、そのために短期的・対症療法的な施策ではなく、基礎から応用に至る「学術」および「科学技術」に対して十分な予算措置を行なうよう訴えるものであります。