分子科学研究所

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2009/12/04

受賞

中川剛志助教に日本物理学会若手奨励賞

物質分子科学研究領域・電子構造研究部門の中川剛志助教が、第4回(2010年)日本物理学会若手奨励賞(領域9)を受賞しました。磁性超薄膜におけるレーザー光電子磁気ニ色性に関する顕著な業績が認められたものです。

中川助教は、磁性薄膜試料から放出される光電子の磁気円二色性を測定すると、ちょうど仕事関数程度のエネルギーの光を照射した際に、磁気円二色性感度が通常の条件よりも約2桁も向上することを発見しました[論文(1)]。これまで紫外光利用はX線利用に比べて感度が2桁程度低く、磁気円二色性光電子顕微鏡法の適用が困難とされていました。しかし、この発見は、現在、磁気ナノ構造を観測する分光学的手段として活用されている第3世代シンクロトロン放射光源を用いたX線磁気円二色性光電子顕微鏡法が、紫外光を用いてもX線と同程度の感度で計測することが可能であることを示しました。実際、中川助教は、紫外レーザーを用いて、Ni薄膜のナノ磁気構造の紫外磁気円二色性光電子顕微鏡像の観測に見事成功しました[論文(2)]。さらに、レーザー光電子法では光子エネルギーが小さいため、より一般的な手法とするには二光子励起の利用が必須ですが、中川助教は、二光子光電子磁気円二色性の初観測にも一光子と同程度以上の高感度で成功し、光電子顕微鏡像の観測にも成功しました[論文(3)]。

これらの研究成果は、顕微鏡による観測技術の可能性を大きく進展させるものであり、今後のさらなる発展が期待できます。

なお、中川助教の一連の成果は、国内外の各方面からも広く注目を集めており、本賞以外にも既に日本表面科学会若手講演奨励賞を受賞しており、また、国際会議での招待講演(3回)、日本物理学会誌及びその他における総説(3篇)でも取り上げられています。 

[論文(1)] Phys. Rev. Lett. 96 (2006) 237402 
[論文(2)] Rev. Sci. Instrum. 78 (2007) 023907 
[論文(3)] Phys. Rev. B79 (2009) 172404

関連サイト

横山グループHP ---http://msmd.ims.ac.jp/yokoyama_g/