お知らせ
2013/12/03
アウトリーチ
「バイオフィルムって何?」
11月20日に「鬼まつり」で知られる滝山寺の横にある常磐中学校に出向き、3年生全員を対象に出前授業を行いました。授業の内容を三部に分け、岡 崎市に3つの研究所があることを最初に紹介しました。生徒の皆さんが大人になって研究者、技術職員や事務職員として研究所で働くことが可能である事を説明 しました。岡崎市に研究所があることを知らない生徒が多かったようで、あまり良く理解されなかったかもしれません。
次に、今回の授業のテーマであるバクテリアのバイオフィルムの説明に移りました。始めに位相差顕微鏡で撮影した身近なバクテリアの写真や動画を見て もらいました。サンプルの一つとして、私の口の中の粘膜細胞とプラークのバクテリアを用いました。最近は患者にプラークのバクテリアを見せてくれる歯医者 もあるようですが、歯周病の原因とされるらせん菌や素早く泳ぐバクテリアの様子は、生徒の皆さんにも若干の気持ち悪さが伝わったのではないかと思います。 同時に、単独のバクテリアがべん毛を使って泳ぐのに比べ、バイオフィルムを形成したバクテリアは固体表面上に凝集して動かない事を理解してもらえたと思い ます。さらに、私が研究対象としている蛍光菌によるバイオフィルムが形成の過程を説明しました。色素で染色したバイオフィルムを実際に見てもらいながら説 明しましたが、この内容は少し難しかったかもしれません。
最後に、ヘムタンパク質であるミオグロビンとカタラーゼを用いた簡単な実験を生徒の皆さんに行ってもらいました。茶色(鉄3価)のミオグロビンに還 元剤を添加し、溶液が赤く変化する(鉄2価になる)ことや酸素ガスを吹き込む実験を行いました。血液や新鮮な肉には2価のヘム鉄が含まれており、そのため に赤いということを何となく理解してもらえたと思います。また、カタラーゼに過酸化水素を添加する実験を行い、酸素の泡の発生を観察しました。同じヘム鉄 を持っているにもかかわらず、カタラーゼの働きはミオグロビンとは違っており、過酸化水素を分解する酵素として働くことが理解できたと思います。ちょうど ヘム鉄と過酸化水素があったので、ルミノール反応も行いました。ミオグロビンまたはヘム鉄の入ったルミノール溶液に過酸化水素を入れてもらい、溶液が瞬時 に青く発光する様子を観察しました。添加するミオグロビンの量が多い場合により強く光る事を“発見”した生徒もいたようです。
授業の内容を欲張ったため、50分の授業時間をかなり過ぎてしまいました。担当の先生にもご迷惑をおかけしましたが、今回の授業が生徒の皆さんに何らかの形で良い影響があればと期待しています。
(吉岡資郎 記)