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プレスリリース

細胞の中の「タンパク質分解装置」が出来上がる新たな仕組みを解明(加藤グループら)

[ポイント]

自然科学研究機構分子科学研究所 / 名古屋市立大学大学院薬学研究科の加藤晃一教授、東京都医学総合研究所の田中啓二所長、名古屋市立大学大学院薬学研究科の佐藤匡史准教授らの研究グループは、プロテアソーム(注1)を構成する部品の一つでその活性を調節するタンパク質と、そのシャペロン(注2)として機能するNas2との複合体の立体構造解析に初めて成功しました。
近年、プロテアソームの働きを抑える薬は抗がん剤として世界中で使用され、大きく注目されています。今回、プロテアソームが形成される新たな仕組みが明らかにされたことで、従来の医薬品とは異なる作用機序をもつ新規医薬品の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Structure」のオンライン速報版で3月27日正午(米国東部時間)に公開されます。

 

[研究の背景]

生命システムの維持には、構成要素である分子素子(タンパク質など)の間の秩序だった相互作用が必要不可欠です。例えば、細胞内においてタンパク質分解の中心的な役割を担っているプロテアソーム(注1)は、多種多様なタンパク質から構成される巨大な酵素複合体であり、その形成過程には一時的に複合体に組み込まれては外れていくシャペロン(注2)としての役割を演ずるタンパク質がいくつも関与しています。これまで私たちのグループでは、タンパク質の立体構造研究を通じてこれらシャペロンタンパク質が働く仕組みを明らかにしてきました。タンパク質分解装置としてのプロテアソームのなかで、その働きを担うタンパク質複合体(活性調節タンパク質複合体と呼ばれる)は、6つのよく似た部品から出来ているため(図参照)、間違った並び方をした不良品が出来てしまう可能性が考えられます。そこで、シャペロンタンパク質が言わば「型枠」としての役割を演じることによって、プロテアソームを効率的にかたちづくることが明らかになってきました。しかしながら、これらシャペロンの中でNas2と呼ばれるタンパク質の構造と役割が唯一不明であったので、プロテアソームが出来上がる仕組みの全貌はわかっていませんでした。

 

[研究の成果]

私たちの研究グループは、プロテアソームを構成する部品の一つでその活性を調節するタンパク質と、Nas2との複合体の立体構造解析に初めて成功しました。その結果、Nas2は、活性調節タンパク質複合体が組み上がるまでの間、タンパク質分解の中核をなすプロテアーゼ複合体が合体しない様に一時的にブロックすることで、未完成な部品からなる不良品装置による暴走を抑える機能を果たしていることがわかりました。言わばドミノ倒しで使われる「ストッパー」の役割です。プロテアソームは、こうした仕組みを通じて効率良く出来上がっていくことが、本研究を通じて初めて明らかになりました。