お知らせ
2015/02/02
プレスリリース
自然科学研究機構分子科学研究所の村橋哲郎教授、山本浩二助教、柳井毅准教授、倉重佑輝助教らの研究グループは、パラジウム化合物が溶液中でベンゼンをとらえる仕組みを解明することに成功しました。
本研究成果は、国際化学誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に2015年1月21日に公開されました。
研究チームは、パラジウム原子1つだけでは、ベンゼンを安定にとらえる能力に乏しいものの、複数のパラジウム原子で1つのベンゼン分子を安定にとらえるのではないかと考えました。研究チームは、これまでにパラジウム原子の個数を制御しながら集合させてパラジウムクラスターを溶液中で合成する手法を開発してきました。今回、3つのパラジウム原子を集合させたパラジウムクラスターがベンゼンを安定にとらえることを観測することに成功しました(図1)。この成功の鍵は、3つのパラジウム原子を背面から支える配位子を適切に選択したことにあります。8個の炭素原子が環状につながった8員環分子であるシクロオクタテトラエンを背面配位子として用いると、パラジウムクラスターがベンゼンと強く結合することを発見しました。一方、背面配位子として、6員環分子や7員環分子を用いた場合には、ベンゼンを安定にとらえる能力を示しません(図2)。8員環有機分子がベンゼンを捕捉する上で重要な役割を担っている要因について、理論的な計算をおこなって究明しました。さらに、研究グループは、パラジウム原子を4つ集合させたクラスターが、ナフタレンを安定にとらえることを観測することにも成功しました(図3)。この場合も、8員環シクロオクタテトラエンがパラジウムクラスターの背面を支える優れた配位子として機能します。
図1. 3つのパラジウム原子からなるクラスターがベンゼンを安定にとらえる。
図2. パラジウムクラスターを支える背面配位子を適切に選択することが成功の鍵となる。8員環シクロオクタテトラエンを用いた場合に、ベンゼンをとらえる能力が高くなる。
図3 ベンゼンやナフタレンをとらえたパラジウムクラスターの分子構造
(L = アセトニトリル配位子)。
掲載誌:Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル:Modulation of Benzene or Naphthalene Binding to Palladium Cluster Sites by the Backside-Ligand Effect
著者:Yuki Ishikawa, Seita Kimura, Kohei Takase, Koji Yamamoto, Yuki Kurashige, Takeshi Yanai, Tetsuro Murahashi
掲載日:2015年1月21日(オンライン掲載)
DOI:10.1002/anie.201409499
本研究は、分子科学研究所・村橋グループ(石川裕騎氏、木村誠太氏、山本浩二助教、村橋哲郎教授)、柳井グループ(倉重佑輝助教、柳井毅准教授)、及び大阪大学大学院学生(木村誠太氏、高瀬皓平氏)により行われました。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金の新学術領域研究「柔らかな分子系」、若手研究(A)、および徳山科学技術振興財団助成研究等のサポートを受けて行われました。
村橋 哲郎
自然科学研究機構 分子科学研究所 協奏分子システム研究センター教授
TEL: 0564-59-5580 E-mail: mura_at_.ac.jp
自然科学研究機構・分子科学研究所・広報室
TEL/FAX 0564-55-7262
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