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プレスリリース

結晶化した有機顔料は10マイクロメートルの厚さでも光と電気を変換できる(平本グループら)

国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院先端物理工学部門の嘉治寿彦准教授と片山美樹雅研究員(当時)、分子科学研究所物質分子科学研究領域分子機能研究部門の平本昌宏教授、中尾聡研究員(当時)らの研究グループは、有機顔料も適切に結晶化すると10マイクロメートル(µm)まで厚くしても有機薄膜太陽電池の光電変換層としての効率をほとんど落とさずに利用できることを発見しました。有機顔料が従来考えられていたよりも桁違いに大きい厚さでも正常に光電変換素子に利用できることが実証されたことにより、今後、結晶の利点を活かした設計による有機薄膜太陽電池や有機発光ダイオードなどの有機光電変換素子の研究開発の促進が期待されます。

本研究成果は、スイスの科学誌「Frontiers in Energy Research」(1月28日付)に掲載されました。
“Ultra-Thick Organic Pigment Layer Up to 10 μm Activated by Crystallization in Organic Photovoltaic Cells”
(有機薄膜太陽電池における結晶化により活性化された10μmに至る非常に厚い有機顔料層)
Frontiers in Energy Research, Vol. 8, Article 4 (2020).
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fenrg.2020.00004

 

研究背景

光エネルギーと電気エネルギーとを変換する光電変換素子において、有機顔料を光電変換層として用いる厚さは通常、nm(ナノメートル)オーダーの厚さに限られてきました。有機顔料を混ぜて光電変換層を作製すると、電気抵抗が大きくなることが多いためです。

例えば、近年大画面テレビや携帯電話のディスプレーに用いられている有機発光ダイオードや、次世代太陽電池の一つとして期待される有機薄膜太陽電池において、有機顔料を用いる厚さは通常、数nm~数十nmです。有機顔料の代わりに有機高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、その厚さが数百nmを超えることも多いですが、どちらの材料系においても、1 µm(マイクロメートル = 千ナノメートル)近くの厚さで正常に動作する例はごく少数の例が報告されるのみで、作製が難しかったためか、厚さが増えると吸収できる光の割合が増えて、発電できる電流が増えていく様子も明確に示されてきませんでした。
 

研究成果

本研究グループは、有機顔料を適切に結晶化すると、10µmまで厚くなっても有機薄膜太陽電池の光電変換層として利用できることを発見しました。この研究で使用した材料はよく知られた有機顔料である、サッカーボール型の分子のフラーレン(C60)と、ペンキの材料にも使われるフタロシアニンとの組み合わせで、これらは過去数十年にわたって標準的な有機薄膜太陽電池用の有機顔料として研究開発に使われてきた材料です。通常、この組み合わせの有機顔料を使った有機太陽電池は厚さ40~50 nmを超えると効率が落ちていくのに対して、これらの有機顔料を混合しながら、適切な大きさ(直径100nm程度)の結晶に成長させることにより(図1)、10 µmまで厚くしても効率はほとんど落ちませんでした(図2)。また、幅広い厚さ(40 nm~1 µm)において、有機顔料が吸収した光と発電した電流とがきれいに対応して増えていく関係を実証しました。(図3)
 

今後の展開

本研究で達成した10 µmという厚さ自体は、可視光をほとんど吸収する厚さを大幅に超えているため、そのまま有機薄膜太陽や有機発光ダイオードの製品に応用するものではありません。一方で、通常数nm~数十nmの厚さで用いられる有機顔料であっても、適切に結晶化すると、従来考えられていたよりも桁違いに厚い10 µmの厚さでも光電変換層として正常に利用できる潜在能力があることが実証されたことにより、今後、結晶の利点を活かした設計による有機光電変換素子の研究開発の促進が期待されます。

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図1 10μmの厚さの光電変換層の断面顕微鏡像

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図2 光電変換層の厚さによる効率の変化の比較 図3 吸収した光と発電した電流の対応
 

謝辞

本研究の一部はJST-ALCA、JSPS科研費(17H04807)、および、ナノテクノロジープラットフォーム事業(分子・物質合成)の支援を受けて実施されました。
 

研究に関するお問い合わせ

東京農工大学大学院工学研究院
先端物理工学部門 准教授
嘉治 寿彦(かじ としひこ)
TEL:042-388-7536
E-mail:kaji-t_at_cc.tuat.ac.jp   

自然科学研究機構分子科学研究所
物質分子科学研究領域 分子機能研究部門 教授
平本 昌宏(ひらもと まさひろ)
TEL:0564-59-5537
E-mail:hiramoto_at_ims.ac.jp

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