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光分子科学研究領域岡本グループ

岡本グループ_メインイメージ
場所:明大寺キャンパス 研究棟1F
Annual Review : こちら

近接場光学顕微鏡,光学イメージング,ナノ物質,貴金属微粒子,キラリティ

新しい光学顕微鏡でナノ物質の励起状態とキラリティを探る

従来の光学顕微鏡では、光の波長(可視光で0.5μm程度)より小さい形を見ることができませんでしたが、近接場光学顕微鏡という新しい方法によってナノメートルの物質の観察が可能になりました。ナノサイズ物質のカラー写真(スペクトル情報)を撮ることができ、また100兆分の1秒単位の極めて短い時間内に起きる変化を、刻一刻、場所ごとに調べることもできます。私たちは、貴金属でできたナノ物質では、物質の特性に深く関わる「波動関数」がこの方法で観察できることも見いだしました。更に、円偏光という螺旋の性質を持つ光で近接場計測をすることで、後で述べるキラリティという性質を、ナノ物質について場所ごとに調べることもできるようになりました。このようにナノ物質の新しい性質を光で調べ、制御する基礎的な研究を行っています。

貴金属ナノ微粒子をある一定の構造で集合させて配列構造を作ると、光を照射したときに、局所的に非常に強い光(金属微粒子のない場合に比べて、最大数百万倍)が発生する場合があると考えられています。通常の光学顕微鏡ではこのような光の場を観察することはできませんが、私達は近接場光学顕微鏡を用いて、発生した強い光の場を、実際にイメージとして観察しました。例えば微粒子が2個連結した構造では、粒子間の隙間に強い光が発生しているのが観察され、これは理論による予測に良く一致します。また最近、同じ近接場光学顕微鏡を用いた実験で、ナノサイズの孔を通ってくる光が、孔に金属板で蓋をすると、かえって強くなるという、奇妙な現象を見いだしました。解析の結果、貴金属の微粒子が光を集める特異な性質が、この現象に深く関わることがわかってきました。

物質には、それ自身とそれを鏡で映したものとが同一でないものがあります。生命を作っているタンパク質分子などは全てそのような物質です。このような自身と鏡像が同一でない特性をキラリティといいます。キラリティのある物質は、左巻き螺旋の円偏光と、右巻きの円偏光に対する応答が異なるため、円偏光を使ってキラリティを調べることができます。私たちは、近接場光学顕微鏡に円偏光を組合せて、ナノ物質の場所ごとのキラリティを調べることができるようになりました。従来の計測法では物質の全体としてのキラリティしかわからなかったのが、私たちの方法では局所的なキラリティが観察でき、今まで隠れていた物質のキラリティが明らかになってきています。生命に関わる分子の研究への応用も考えられます。このような研究を発展させて、ナノ構造物質の励起状態やキラリティが関わる分子科学を発展させて行きたいと考えています。

 

2015oka.jpg図:金でできた様々なナノ構造体の近接場光学イメージ。
A: 単一のロッド状金ナノ微粒子(長さ540 nm)。波動関数の振幅が可視化されている。
B: 球状金微粒子(直径100 nm)の二量体。微粒子間の隙間に強い光が観察される。
C: 球状金微粒子(直径100 nm)の島状集合体。辺縁部に強い光が局在する。
D: 金長方形構造の円偏光によるイメージ。黄色と青は逆符号のキラリティを示す。長方形はキラリティがないが,局所的には大きなキラリティがあることが可視化された。

参考文献

  1. H. Okamoto and K. Imura, "Visualizing the Optical Field Structures in Metal Nanostructures," J. Phys. Chem. Lett. 4, 2230-2241 (2013).
  2. H. Okamoto, T. Narushima, Y. Nishiyama, and K. Imura, "Local Optical Responses of Plasmon Resonances Visualised by Near-Field Optical Imaging," Phys. Chem. Chem. Phys. 17, 6192-6206 (2015).
  3. K. Imura, K. Ueno, H. Misawa, and H. Okamoto, "Anomalous Light Transmission from Plasmonic Capped Nano-Apertures," Nano Lett. 11, 960-965 (2011).