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理論・計算分子科学研究領域岡崎グループ

場所:明大寺キャンパス 南実験棟419号室
Annual Review : こちら

理論生物物理、分子モーター、トランスポーター、バイオエナジェティクス、分子シミュレーション

生体分子マシンの機能ダイナミクスを理論的手法で解明し、デザインする

 機能ダイナミクスは、生体分子マシンが働く仕組みを理解する上で必要不可欠です。例えば、モータータンパク質は、ATP加水分解エネルギーを用いて、レールの上を歩いたり、固定子に対して回転したりします。膜輸送タンパク質は、生体膜に対して内側に開いた構造と外側に開いた構造との間で構造変化することで、基質分子を膜の内外へ輸送しています。このように自然が作り上げた精巧かつダイナミックなナノマシンの働く仕組みを原子・分子レベルで解明し、そのデザイン原理を学ぶことが目標です。

生体分子マシンの機能ダイナミクスは、幅広い階層の動き・反応が複雑にからみあっています。このようなダイナミクスを理解するには、多階層な(マルチスケールな)モデルを駆使する必要があります。従来の全原子分子動力学シミュレーションのみでは、とても太刀打ちできません。なぜなら、生体分子マシンは巨大複合体で、溶媒分子も含めると全原子数は数十万以上になる上に、典型的な機能時間スケールはミリ秒以上であるからです(1兆回時間ステップの繰り返し計算に相当)。私たちは、全原子・粗視化モデルを用いた分子シミュレーションや、速度論モデルなどを駆使してこの問題に取り組んでいます。

私たちはこれまで、細胞内の主なエネルギー供給源であるATP合成酵素に取り組んできました1-3)。その酵素部分であるF1-ATPaseは、ATP加水分解エネルギーを使って中心軸を回転させる回転分子モーターです。その回転力を生み出す重要なステップである、ATP加水分解後のリン酸解離について、全原子分子動力学シミュレーションに基づいて解離の時定数を見積もり実験値と比較することで、そのタイミングと経路を明らかにしました1)。また、共通の回転軸を介してF1とFoの2つのモーターが協同して働く仕組みを、ねじれ弾性や摩擦といった力学的特性に基づいたマスター方程式を用いて明らかにしました2)。このように、生体分子マシンは様々な階層で面白い問題が満載です3)

2018_okazaki.pngMolecular dynamics simulations of F1-ATPase. Torque on central stalk or biasing potential for Pi are applied to speed up functional dynamics.

参考文献

  1. K. Okazaki, D. Wöhlert, J. Warnau, H. Jung, Ö. Yildiz, W. Kühlbrandt and G. Hummer “Mechanism of the electroneutral sodium/proton antiporter PaNhaP from transition-path shooting”, Nature Communications 10, 1742, doi:10.1038/s41467-019-09739-0 (2019)
  2. A. Nakamura, K. Okazaki, T. Furuta, M. Sakurai and R. Iino, “Processive chitinase is Brownian monorail operated by fast catalysis after peeling rail from crystalline chitin.” Nature Commun. 9, 3814, doi:10.1038/s41467-018-06362-3 (2018).
  3. 岡崎圭一 “F1-ATPaseの機能的運動のマルチスケールな解析:リン酸解離からγサブユニット回転の弾性・摩擦まで.” 生物物理 55:208-209 (2015).
  4. K. Okazaki & G. Hummer, “Elasticity, friction, and pathway of gamma-subunit rotation in FoF1-ATP synthase.” Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 112:10720-10725 (2015).
  5. K. Okazaki & G. Hummer, “Phosphate release coupled to rotary motion of F1-ATPase.” Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 110:16468-16473 (2013).