分子科学研究所

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計算科学研究センター(岡崎共通研究施設)

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研究テーマ

生体分子マシンの機能発現ダイナミクスの解明とその制御

キーワード

理論生物物理、分子モーター、トランスポーター、バイオエナジェティクス、分子シミュレーション


細胞で働く分子モーターやトランスポーターなど生体分子マシンは、機能する際に構造を変化させることが知られています。例えば、ミトコンドリアでATPを合成するATP合成酵素は、化学エネルギーを用いて回転する分子モーターです。細胞膜を超えて基質分子を輸送するトランスポーターは、膜に対して内側に開いた構造と外側に開いた構造との間で構造変化することで、基質輸送を行っています。このように自然が作り上げた精巧かつダイナミックなナノマシンが働く仕組みを原子・分子レベルで解明し、その知見に基づいた機能制御を目指しています。

 

私たちは、生体分子マシンが機能する瞬間の動き「機能発現ダイナミクス」を、原子・分子レベルでコンピュータ上に再現して「見る」ことで、その仕組みを理解したいと思っています。しかしながら、これは容易なことではありません。なぜなら、生体分子マシンは、巨大な分子である上に、機能する時間スケールはミリ秒以上と(分子スケールにしては)遅いからです。数十万原子以上からなる巨大な系のミリ秒時間スケールの動きをシミュレーションするのは通常の手法では困難です。そこで、動く瞬間を切り出してシミュレーションする手法や、複数原子をまとめて粗視化する手法などを用いて、機能する瞬間の動きを捉えようとしています。

 

私たちはこれまで、細胞内の主なエネルギー供給源であるATP合成酵素や1) 、細胞内のイオン濃度を調節するトランスポーターNa+/H+交換輸送体2,3)に取り組んできました。Na+/H+交換輸送体においては、イオン輸送が起こる瞬間の動きをシミュレーションで捉えて、イオン輸送を制御している重要な相互作用を同定しました。この相互作用を実験的に調節することで、イオン輸送速度を2倍以上速くすることに成功しました。このように、シミュレーションで解明した生体分子マシンの仕組みに基づいた機能制御に挑戦していきます。

 

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Control of the transporter function based on mechanism elucidated by simulation.

 

参考文献

  1. K. Okazaki & G. Hummer, “Elasticity, friction, and pathway of gamma-subunit rotation in FoF1-ATP synthase.” Proc. Natl. Acad. Sci. USA 112:10720-10725 (2015).
  2. K. Okazaki, D. Wöhlert, J. Warnau, H. Jung, Ö. Yildiz, W. Kühlbrandt and G. Hummer “Mechanism of the electroneutral sodium/proton antiporter PaNhaP from transition-path shooting”, Nature Communications 10, 1742 (10 pages) (2019).
  3. 岡崎圭一 “分子シミュレーションによるNa+ /H+交換輸送体のメカ ニズム解明と輸送速度を上げる改変” 生物物理 60:102-104 (2020).

ラボスタッフ