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有限の厚さをもつ固液界面のオペランド分子科学研究
界面反応・触媒・エネルギー関連化学・走査プローブ・分光計測
気体と固体が接する界面でおきる化学反応の研究(Gerhald Ertl, 2007年)にノーベル化学賞が授与されてから15年が経過しました。二つの物質が接触する場所である界面の研究を新しいステージに導くために、界面が有限の厚さ(0.001–1 µm)をもつことを明確に意識して、ひとつひとつの分子(サイズ0.01 µm)を見ていく分子論的な視座と、より大きな空間スケール(0.1–1 µm)で界面の両側を見る連続体的な視座の両方をあわせもつことが求められます(図)。このような問題意識のもとで、界面が機能を発揮している状態での計測評価(これをオペランド計測といいます)を進めるために、世界最先端の計測評価技術を活用していきます。
具体的には(1)太陽光と水を使って水素をつくる光触媒と(2)低摩擦を実現する潤滑油をターゲットに選んで研究をはじめます。光触媒は50年ほど前に日本で発明された技術であり、高性能な光触媒を日本の研究者が次々に見出してきました。水から水素をつくる効率は50年前には考えられなかったほど高くなりましたが「どうして効率を高くすることができたのか?」がわかっていないので、より効率の高い光触媒を設計するための指針がありません。
試行錯誤に頼って開発をすすめざるを得ない事情は潤滑油でも同じです。蒸気圧の低い有機溶媒(長鎖の炭化水素など)にごく微量の添加剤(濃度100 ppmのカルボン酸など)を加えると、低摩擦の状態を長く維持できる潤滑油になります。潤滑油に生分解性(微生物などによって自然に分解される性質)を付与するために、炭化水素を別の化合物(エステルなど)に置き換えることが求められています。しかし「微量の添加剤がどうやって摩擦をやわらげているのか?」がわからないので、生分解性潤滑油に有効な添加剤の分子設計が進みません。水と光触媒が接する界面や、潤滑油と固体が接する界面をオペランド計測する方法を工夫してこれらの問いに答えていきます。
Liquid–Solid Interface of Finite Thickness