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凝縮系における反応、機能、物性を生み出すダイナミクスの理論研究
揺らぎ・緩和、不均一性、階層的動力学、多次元解析
水の特異的な熱力学的性質やタンパク質の機能などはどのように生まれるのでしょうか?溶液や生体分子などの系は凝縮系と呼ばれます。このような凝縮系には、フェムト秒(10-15秒)という非常に速い時間スケールの分子振動から、マイクロ秒(10-6秒)からミリ秒(10-3秒)そしてさらに遅い時間スケールの分子の集団的な運動やタンパク質の構造変化が存在します。これらの運動は広い時間スケールにわたっているだけでなく、運動の空間スケールもそれぞれ異なっており、しかも非常に複雑に絡み合っています。さらに、温度や圧力により運動の様相も大きく変化します。このような複雑な運動により、分子集合体としての構造は絶えず変化しています。また、そのような揺らぎの中で、様々な化学反応も進行し、それらの結果として、物質の様々な物性やタンパク質の機能につながります。また、これまでは、非常に多くの分子数の集団的な平均としての物性や反応が調べられていたにすぎませんでした。しかし、実験の進展により、一つの分子の構造変化や反応を追跡することも可能になってきました。その結果、集団平均された振る舞いや反応には見られない複雑な様相も明らかになってきました。私達は統計力学や量子力学に基づく独自の理論計算・解析手法の開発とシミュレーションの活用により分子運動を解析し、物質の性質やタンパク質の機能がどのように生み出されるのか、また、化学反応がどのように進行するのかなどを理論・計算科学的に研究しています。
Schematic of enzymatic reaction. Reactions rapidly take place through 'conformational excited states' on a two-dimensional surface expressed by fast and slow variables. (Mori and Sato, J. Pjys. Chem. Lett. 10, 474-480 (2019).)
Schematic figure of low- (blue) and high- (red) density local structures in supercooled water. Local density fluctuations generate thermodynamic and dynamic anomalies of water. (Saito et al., J. Chem. Phys. 149, 124504 (8 pages) (2018).)