研究・研究者
研究会・セミナー
演 題 | 「光・スピン・電荷の相乗効果によるスピンクロスオーバー現象の新展開」 |
---|---|
日 時 | 2005年07月22日(金) 16:00 |
講演者 | 小島憲道 教授 (分子科学研究所分子集団研究部門(客員) 東京大学大学院総合文化研究科) |
場 所 | 研究棟201セミナー室 |
概 要 | 配位子場がスピンクロスオーバー領域にある混合原子価錯体では、電荷移動とスピンクロスオーバー転移が連動した特異な相転移を起こす可能性を持っている。最近、我々は配位子場がスピンクロスオーバー領域にある混合原子価錯体(n-C3H7)4N[FeIIFeIII(dto)3](dto = C2O2S2)において、FeIIからFeIIIに一斉に電子が移動し、FeIIとFeIIIのサイトが完全に入れ替わる電荷移動相転移を見出した。この相転移は、系全体の自由エネルギーを最も安定にするために隣接する金属イオン間で電荷を移動させてスピン状態の組換えが起こるものであり、相転移温度(Tc = 120 K)のところでアボガドロ数個の電子移動を伴った構造転移を起こし、伝導度および誘電率に特異な増幅が起こる。また、この系ではFeII(S= 0)とFeIII(S= 5/2)の間に存在する電荷移動相互作用のために強い強磁性相互作用が働いており、この系は強磁性体になる。(n-CnH2n+1)4N[FeIIFeIII(dto)3]で見出された電荷移動相転移および強磁性転移は対イオンのサイズに著しく依存する。実際、n = 3, 4ではそれぞれ120 Kおよび140 Kで電荷移動相転移が起こり、低温相のスピン配置(FeII:S= 0,FeIII:S= 5/2)で強磁性が発現するが、n = 5, 6では常圧下で電荷移動相転移が起こらずn = 3,4の高温相に相当するスピン配置(FeII:S= 2,FeIII:S= 1/2)で強磁性が発現することを明らかにした。また、この系における電荷移動相転移および強磁性転移は圧力に著しく依存する。この結果は、固体状態で光異性化を起こすスピロピランを対イオンとして[FeIIFeIII(dto)3]∞の層間に導入することにより、スピロピランの異性化を媒介とした[FeIIFeIII(dto)3]錯体の電荷移動相転移および強磁性の光亜制御が可能になりことを強く示唆している。この分子設計に基づき、光異性化分子であるスピロピランを対イオンとして導入した光応答性有機・無機複合錯体(SP)[FeIIFeIII(dto)3](SP = spiropyran)を開発し、スピロピランの光異性化を媒介とする強磁性および電荷移動相転移の光制御に成功した。 |
お問合せ先 | CM2 seminar担当 高橋 一志 |