12月19日(水)(2日目) |
8:30- 9:00
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「超高速テラヘルツ応答で覗く光誘起絶縁体-金属転移」
中屋秀貴(東北大理D1)
光誘起絶縁体-金属転移の研究において、光誘起”金属”状態の電子的性質を明らかにする上では、遠赤外領域におけ る過渡スペクトルを測定することが重要である。二次元有機伝導体(α-(BEDT-TTF)2I3)における光誘起金属状態を、<100cm-1の 低エネルギー領域における定常および過渡スペクトルから議論する。
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9:00-9:30 |
「二次元有機導体の格子歪みを伴う電荷秩序と光誘起融解」
田中康寛 (分子研)
まず、擬二次元有機導体で見られる格子歪みを伴う電荷秩序について、平均場近似を用いて調べた結果を紹介する。具体的には、有機導体 θ-(ET)_2RbZn(SCN)_4とα-(ET)_2I_3について、実験で観測される格子歪みが電荷秩序を安定化させることや、有限温度での相転 移について議論して両物質の比較を行う。また、α-(ET)_2I_3の電荷秩序に対する光照射の効果について、時間依存ハートリー・フォック近似を用い て調べた結果についても報告する。
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9:30-9:50 |
「ダイマーモット系絶縁体κ-(BEDT-TTF)_2Xにおける光誘起相転移」
川上洋平(東北大理M1)
ダイマーモット絶縁体κ-BEDT-TTF塩における、光誘起絶縁体-金属転移を、中赤外領域の電子、振動スペク トルの過渡的変化から議論する。特に、電荷秩序系(α-、θ-)のBEDT-TTF塩や、これまでに報告されている一次元モット絶縁体における光誘起絶縁 体金属転移との機構の違いに注目する。
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9:50-10:05 |
休 憩
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<<遷移金属酸化物+強相関>>
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10:05-11:05 |
「強相関酸化物における光誘起ダイナミクス -電子相関と多自由度-」
石原純夫(東北大理)
電子間に強い相互作用の働く遷移金属酸化物における光誘起相転移現象、光誘起ダイナミクスについて、研究の現状を 概観する。特に電子相関効果とスピンや軌道などの多自由度の存在が光誘起現象に及ぼす影響を考える。またマンガン酸化物における最近の我々の計算結果につ いて簡単に紹介する。
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11:05-11:50 |
「モット絶縁体の光誘起絶縁体―金属転移と超高速緩和」
岡本 博(東大新領域)
モット絶縁体の光誘起絶縁体―金属転移と超高速緩和について、二次元銅酸化物薄膜における最近のフェムト秒過渡吸収分光の結果を中心に紹介する。一次元系との比較や今後の課題についても議論したい。
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11:50-12:50 |
昼 食
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12:50-13:20 |
「ペロフスカイト型マンガン酸化物における光誘起電荷・軌道整列相融解の超高速ダイナミクス」
松崎弘幸 (東大新領域)
これまでのペロフスカイト型マンガン酸化物における光誘起相転移の研究では、主に汎用の時間分解能200フェムト 秒クラスのポンププローブ分光測定が用いられてきたが、時間分解能の不足から転移の初期過程の詳細は十分に明らかにされてこなかった。今回、典型的な電 荷・軌道整列相物質であるペロフスカイト型マンガン酸化物(Nd0.5Ca0.5MnO3)を対象として、時間分解能~30フェムト秒のポンププローブ分 光測定を行い、光誘起相融解の初期ダイナミクスを調べた。講演では、結果を基に、この系の相融解過程における電荷および格子ダイナミクスについて考察す る。
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13:20-14:20
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「強相関系のスピン緩和及び電子相関で増強されるフォノン効果」
松枝宏明(仙台電波高専)
強相関電子系における光誘起相の生成過程では、強相関系特有の素励起が相変化の時間・空間スケールを決めていると 考えられる。従って非平衡緩和過程における素励起の量子ダイナミクスを理解することが不可欠である。その目的のためにペロブスカイト型マンガン酸化物の光 誘起現象に着目し、スピンダイナミクスの特徴を議論する。また電子相関・スピン電荷自由度と格子緩和がどのような関係にあるのか一次元モット絶縁体を念頭 に置いて考察する。
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14:20-14:35 |
休 憩
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14:35-15:20
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「ペロブスカイト型マンガン酸化物における超高速スピンダイナミクス」
松原正和(産総研CERC)
ペロブスカイト型Mn酸化物においては、種々の外部摂動により超巨大磁気抵抗(CMR)効果に代表される劇的な絶 縁体-金属転移を引き起こすことができるため、光による相制御という観点からも現在まで多くの研究が行われてきた。しかしながら、光励起された状態におい て実際どのような相が実現されているのか明確な知見が得られていない。本講演では、電荷・軌道整列反強磁性絶縁体相と強磁性金属相の臨界領域に位置するペ ロブスイカイト型Mn酸化物を対象に、フェムト秒時間分解磁気光学Kerr効果を用いることにより、この系における超高速光学応答の起源、特に光誘起スピ ンダイナミクスについて考察する。
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15:20-16:20
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「モット絶縁体の光強励起状態とそのダイナミックス」
高橋 聡(奈良先端大)
1次元モット絶縁体を光強励起した場合に金属的状態が生成されることが実験的に知られている。この金属状態の起源 を解明するために、1/2フィルド1次元PPPモデルにおいてパンプ・プローブ信号などを計算して、光強励起状態の性質を調べた。その結果、より弱い励起 の場合は、スピンと電荷の自由度が分離した少数のエネルギー固有 状態が光励起状態の量子重みをほぼ独占しているが、極めて強く励起した状態におい てはスピン・電荷結合が顕著であり、これが金属的状態の起源であることがわかった。また、このスピン・電荷結合の結果、強励起状態においては弱励起の場合 には見られないスピン緩和は発生することがわかった。2次元系における同手法による研究結果についても発表する予定である。
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